【創作】習作を書く【練習のための作品】
どんなに文才のある人でも、人生で初めて描いた物語が出版されることはないでしょう。
試行錯誤を重ね、失敗をくり返し、他の作品から学びとることで、次第に”作品”として成り立ってきます。
そこで必要になるのは「習作」という概念です。
習作とは、平たくいえば、練習のために書く作品です。
今回は小説を書く練習について考えていきましょう。
習作のつもりで書くこと
書き手には、自分の作品を封印することがあります。
なんらかの事情によって封印することになった作品も、広い意味では習作といえます。
自分自身で”ボツ”と判断するわけですが、書き手はこの経験から、気づきや学びを得ることができます。
世に送り出すに相応しい作品を仕上げるべく、力をつけていくわけですね。
しかしこの場合、書きはじめたときは習作のつもりで書いたわけではないはずです。
ネットで公開したり、新人賞に応募したりと、当初は作品の行き先を見据えていたのではないでしょうか。
今回考えたいアプローチは、まったく別のものです。
筆力を高めるには、はじめから「練習」のつもりで書く作品があってもいいのです。
既存の作品を流用する
習作はあくまで「練習」ですから、基本的に人目に触れることはありません。
この前提があるならば、オリジナルである必要はなく、既存の作品を流用してもかまわないのです。
● 既存の物語に、”自分の考えた主人公”を設定して書く
● 文芸誌などで連載途中の作品を読んで、”続き”を自分で書く
● 完結している作品の”続編”や”スピンオフ”を想像しながら書く
● 舞台設定や登場人物の人格を”借用”して、自分の作品として書く
● 自分が好きな作品のプロットを”思い出しながら”、自分の文体で書く
ここで重要なのは、自分なりに書いて(描いて)みることです。
既存の作品と対比すれば、自分のクセや特徴、幅の広さや狭さ、奥行きがわかります。
土台をプロの作品から流用することで、自分のやるべきことや目指すべきところも表面化するでしょう。
仮に、元ネタとなる作品よりもおもしろいものが書けたのなら、きっとプロになれるはずです。
書き手の「挑戦」に利用する
現在の筆力を試したり、可能性を探ったりする場合にも、習作は有効です。
たとえば次のような例です。
● 慣れていない人称で物語を進めてみる
● 不得意なジャンルの要素を取り入れてみる
● 自分とはちがう性別の主人公を設定してみる
● 壮大なテーマや淀みのあるトピックに挑んでみる
● 浮かんだ目論みや思いついた仕掛けを実践してみる
小説の書き方について、不慣れを自覚していたり、未熟さを実感していたり。
あるいは、自分では抱えきれないであろう題材を厚かったり、なんらかのギミックを実験したり。
いわば、書き手自身の「挑戦」に際して、習作を利用するのです。
ただ小説を書いたのでは到達しないようなところも、「習作」であれば手を伸ばせる可能性が見えてくるでしょう。
強度を下げた書き方
作品のネット公開や、新人賞への応募には、少なからずプレッシャーがかかります。
このプレッシャーは決して悪いものではないのですが、場合によってはかえって筆を遅らせることも考えられます。
常に意気込んで作品と向き合うのはけっこうですが、なにかを試したり、挑戦したりするときには、強度を下げた書き方も必要です。
これこそが、習作の存在理由といえます。
いうまでもなく、習作の在り方は多種多様です。
さまざまなアプローチがあっていいし、その解釈自体も人それぞれです。
習作はあくまで「練習のための作品」ということは共通していて、書き手からすれば気負いすることなく作品と向き合えます。
「これは習作だ!」と割り切り、のびのびと書くことで、筆力の向上につなげていきましょう。
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