「緊張」と「緩和」のギャップを扱う
「緊張」と「緩和」は、さまざまな心理効果をもたらします。
安堵や絶望、笑いや感動など、緊張と緩和に触れた私たちは心を大きく動かされるのです。
おもしろい物語を書きたいのであれば、これを作品に盛り込まない手はありません。
扱うべきポイントは、ギャップです。
書き手は、緊張から緩和までのギャップをいかにして作ることができるかに着目しましょう。
① 女性はひとり夜道を歩いている。
② ふと、後ろのほうから足音が聞こえた。
③ 男がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
④ どうやら、自分を追いかけているようだ。
⑤ 怯えた女性は、必死になって逃げる。
⑥ 恐怖から声が出せず、助けを呼べない。
⑦ 振り返ると、すぐそこまで男が迫っている。
⑧ ついに男は、女性の肩に手かけた。
⑨ 女性が「もうダメだ」と思った瞬間、
⑩「財布、落としましたよ」と男は言い、女性の財布を差し出した。
この場合、①~⑨までは緊張状態が続き、最後にようやく緩和が訪れますね。
緊張と緩和を描くときは、基本的にこの「9対1」の割合で考えましょう。
ピンと張りつめた空気を長く演出して、最後の最後にストンと落とす。
すると、緊張の度合いが強くなり、それに応じて緩和させたときの落差が大きくなります。
読み手は、ここにおもしろみを感じるのです。
慣れないうちは、ほとんど緊張を描くつもりで構成するのがベターです。
緩和を用いるのは最後のオチだけで、それまではひたすら「いかに緊張させるか」にフォーカスしながら描き続けるわけです。
巧い作家は、緊張と緩和を多重に構成することもできます。
「緊張→緩和」を何度もくり返しながらも、実は緊張状態のまま物語を進めている。
そして最後には緩和をもってしっかり落ちる、という構造です。
この意外性は、小説のおもしろさに直結します。
緊張と緩和のギャップによって、読み手を「あっ!」と驚かせるような作品になるのです。
ぜひ、創作の参考にしてください。
■ 参考
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません