【一人称の小説】視点の乱れを防ぐ【包括的なマネージメント】
書き手は「視点の乱れ」に注意しなければなりません。
小説全般にいえることではありますが、一人称で書く場合はその扱いがデリケートになります。
一人称小説での視点は、物語全体に共鳴する要素です。
これをないがしろにすることのないよう「注意すべきこと」を中心にご紹介します。
視点は動かせないもの
三人称多元型であれば、物語のなかで複数の視点を切りかえながら使います。
書き手は、視点が混在しないように配分したり、読み手に現在の視点がわかるように示したりと、主に「扱い方」に注意しながら筆をすすめます。
一人称で書く場合は、「視点を固定」することになります。
当然ながら、一度固定した視点は動かすことはできません。
いくら物語がダイナミックに展開しても、当事者である主人公の視点でしか見ることができないのです。
書き手が注意すべきは「視点を動かさないこと」です。
原則として”やってはいけない”という意味での「禁止事項」であり、もしも違反してしまうと物語にはマイナスに作用します。
知らない情報は一切書けない
もっともわかりやすい例は、「主人公が知らない情報」の扱いです。
一人称視点での物語は、主人公が知らない情報を書くことができません。
たとえば、主人公の恋人が浮気していたとしましょう。
このことを主人公が知らなければ何も起こっていないのと同じです。
主人公に対する恋人の接し方にクセをもたらしたり、二人の関係性の描き方に変化を与えたりと、裏設定として活用はできるでしょう。
しかし一人称で書いておきながら主人公が知らない情報を読み手に提示するなど、あり得ないことですね。
包括的なマネージメントが必要
書き進めている途中(もしくは書き終えたあと)で、「”浮気のことを知っていた”ほうがおもしろくなる」と考えたとしましょう。
その場合、主人公が事実を知る「きっかけ」が必要です。
「いつの間にか知っている設定に移行していた」となれば、読み手が困惑するからです。
浮気を知るきっかけは、以下の3つが考えられます。
● 他者がもたらす
⇒ 誰かが教えてくれる
● 偶然見つける
⇒ 浮気現場に遭遇する
● 主人公が気付く
⇒ 恋人の様子に違和感を覚える
くり返しになりますが、一人称小説では視点の変更ができません。
どれを選んだとしてもターニングポイントとなる場面が必要になります。
この「きっかけ作り」もまた難しく、書き手のご都合主義にそって書くと展開が不自然になり、読み手に見破られます。
もちろん浮気を知る前後で描き方も変わってくるでしょうから、ターニングポイントとなる箇所からごっそりと書き直す必要も出てきます。
一人称で書く場合、包括的なマネージメント能力が求められるのです。
「視点の乱れを防ぐ」といっても、ただ固定すればいいわけではありません。
書き手の認識が甘ければ、物語が破綻します。
物語全体を見渡しながら、細部への配慮を怠らないよう注意しましょう。
■ 参考
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