小さな謎で読み手を惹きつける
今回ご紹介するのは、ミステリー小説にあるような大がかりな謎ではありません。
読み手を惹きつけるための、小さな謎です。
テレビ番組で「コマーシャルの後、あの大物芸能人が登場!」といった演出をすることがあります。
すると視聴者は、「大物芸能人って誰なんだろう」と疑問をもち、そこからさまざまな憶測を立てます。
コマーシャルを観ながら、チャンネルを変えることなく待つわけですね。
好奇心を煽りながら、視聴者をじらすこの手法。
もちろん、小説にも活用できます。
とある田舎に旅行で訪れた主人公が、町を散策します。
昔ながらの美しい風景に心を動かされる一方で、どことなく奇妙な雰囲気を感じます。
そこで主人公は、違和感の原因を探ることにしました。
小さな公園に目をやったとき、あることに気づいたのです。
と、ここで区切ってしまうのです。
読み手からすれば、「主人公が気づいた何か」は謎そのものであり、これを知りたくなるはずですね。
書き手が謎を引っ張ることで、読み手の興味を引き、物語の奥のほうに誘導していくのです。
重要なのは、区切るタイミングです。
改行や空行のような区切りであれば、謎がすぐに解けてしまいます。
これではあまり意味がないですね。
かといって、小さな謎をいつまでも引っ張るのも考えものです。
謎を抱えた読み手は、モヤモヤしたまま物語を読み進めるわけですから、散漫とする可能性もあります。
原則として、小さな謎は「章」で区切りをつけるのが効果的です。
なぜなら、読み手が本を閉じるタイミングは章の区切りだからです。
テレビ番組をひとつの文学作品として考えるのなら、コマーシャルで区切られるのは章の終わり、ということです。
章の終わりで一旦区切りをつけると、本を閉じたまま最後まで読まれないパターンも考えられます。
読み手が離れてしまう状況を防ぐためにも、このテクニックは章の終わりに使用するのがベターです。
そして次の章の冒頭で謎を明かせば、読み手は待たされたぶん、少しだけ満足します。
このプロセスがくり返されれば、あっという間に小説が読み終わるでしょう。
どんどん読めてしまう小説には、このようなテクニックがちりばめられているのです。
もちろん、これはあくまでも小さな謎を扱う場合です。
物語の根幹を支えるような大きな謎の場合は、章をまたいで解き明かしたり、ラストまで引っ張ったりすることもあります。
設定する謎に応じて、違和感のない程度にバランスをとっていきましょう。
■ 参考
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません