大きな謎は小出しに明かす
今回は、大きな謎の扱いについて考えます。
ここでいう「大きな謎」とは、物語の根幹を支えるような、主軸となるべき秘密のことです。
書き手は、どのようにしてこれを扱うべきなのでしょうか。
前回の例をもって考えましょう。
とある田舎に旅行で訪れた主人公が、町を散策します。
昔ながらの美しい風景に心を動かされる一方で、どことなく奇妙な雰囲気を感じます。
そこで主人公は、違和感の原因を探ることにしました。
小さな公園に目をやったとき、あることに気づいたのです。
ここで章が終わり、読み手には「主人公が気づいたことって何だろう」という小さな謎が与えられます。
次の章で明かされた答えが、「子どもが一人も見当たらない」だったとしましょう。
この場合、「子どもがいない町」を舞台に設定したのですから、町に子どもがいない理由は物語における重大な要素となります。
当然、読み手にも「なぜ子どもがいないのか」という新たな疑問が生まれるでしょう。
ここで、大きな謎に触れるわけです。
これを物語に組み込むとき、書き手に必要なのはどのように明らかにするかを考えることです。
具体的なコツは、ヒントを小出しにすることです。
子どもがいない町には、その理由や背景があるはずです。
主人公はそれを探るべく、子どもがいそうな場所を探すでしょう。
幼稚園や小学校を訪れてみたり、産婦人科や小児科があるかを確認してみたりと、フィールドワークをするのです。
そうしたときに、断片的な情報を示すことが重要です。
小出しにされた情報は、小さな謎として読み手に蓄えられていきます。
それが積み重なったり、紐づいたり、パズルのようにハマったりすることで、大きな謎に迫っていくのです。
読み手は、大きな謎を解き明かすべく物語を読み進めています。
それが徐々に明らかになっていく様子や、解き明かしたときの心身の動きは、物語の読みどころになります。
物語にある「盛り上がり」はこのような部分にあり、大きな謎はそれを担うカギとなるわけですね。
謎自体は、単純なものでかまいません。
ただし、それを解き明かすプロセスには、書き手の工夫を加えたいですね。
小出しにしながら、読み手を引き込んでいきましょう。
■ 参考
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