小さな謎で読み手を惹きつける

2019年3月23日

 

今回ご紹介するのは、ミステリー小説にあるような大がかりな謎ではありません。

読み手を惹きつけるための、小さな謎です。

 

テレビ番組で「コマーシャルの後、あの大物芸能人が登場!」といった演出をすることがあります。

すると視聴者は、「大物芸能人って誰なんだろう」と疑問をもち、そこからさまざまな憶測を立てます。

コマーシャルを観ながら、チャンネルを変えることなく待つわけですね。

 

好奇心を煽りながら、視聴者をじらすこの手法。

もちろん、小説にも活用できます。

 

 

とある田舎に旅行で訪れた主人公が、町を散策します。

昔ながらの美しい風景に心を動かされる一方で、どことなく奇妙な雰囲気を感じます。

そこで主人公は、違和感の原因を探ることにしました。

小さな公園に目をやったとき、あることに気づいたのです。

 

 

と、ここで区切ってしまうのです。

読み手からすれば、「主人公が気づいた何か」は謎そのものであり、これを知りたくなるはずですね。

書き手が謎を引っ張ることで、読み手の興味を引き、物語の奥のほうに誘導していくのです。

 

 

重要なのは、区切るタイミングです。

 

改行や空行のような区切りであれば、謎がすぐに解けてしまいます。

これではあまり意味がないですね。

かといって、小さな謎をいつまでも引っ張るのも考えものです。

謎を抱えた読み手は、モヤモヤしたまま物語を読み進めるわけですから、散漫とする可能性もあります。

 

原則として、小さな謎は「章」で区切りをつけるのが効果的です。

 

なぜなら、読み手が本を閉じるタイミングは章の区切りだからです。

テレビ番組をひとつの文学作品として考えるのなら、コマーシャルで区切られるのは章の終わり、ということです。

 

章の終わりで一旦区切りをつけると、本を閉じたまま最後まで読まれないパターンも考えられます。

読み手が離れてしまう状況を防ぐためにも、このテクニックは章の終わりに使用するのがベターです。

 

そして次の章の冒頭で謎を明かせば、読み手は待たされたぶん、少しだけ満足します。

このプロセスがくり返されれば、あっという間に小説が読み終わるでしょう。

どんどん読めてしまう小説には、このようなテクニックがちりばめられているのです。

 

もちろん、これはあくまでも小さな謎を扱う場合です。

物語の根幹を支えるような大きな謎の場合は、章をまたいで解き明かしたり、ラストまで引っ張ったりすることもあります。

設定する謎に応じて、違和感のない程度にバランスをとっていきましょう。

 

 

 

■ 参考

 

 

創作

Posted by 赤鬼