物語の現実を会話文で壊さない

物語には、物語の現実があります。

これを、書き手の都合にあわせて扱ってはなりません。

とくに気をつけるべきは、会話文の書き方です。

登場人物の性格やストーリーはどうにかつじつまを合わせることができますが、会話はそうはいきません。

会話文は、登場人物の「生の声」が表面化する文章です。

つまり、会話文を読むときは「物語の現実」にもっとも近寄る瞬間でもあるからです。

例を見てみましょう。

主人公が、「彼女と別れたことを友人に告げる場面」です。

原文

(友人) 「最近、彼女とうまくやってる?」

(主人公)「ついさっき別れたよ」

近況を確認するために恋人との動向を伺うやりとりは、実生活のなかでよくあることではあります。

しかし、彼女との関係性を開口一番に探ってくる友人の発言は、とても不自然です。

この場合、「主人公が彼女と別れたことを友人に告げる」という書き手側の目的があるため、わざとらしい会話になっているのです。

書き手は、このような会話の不自然さを取り除かなければなりません。

少しばかり工夫してみましょう。

改善文

(友人) 「この前競馬で大当たりしたからさ、今日の焼肉はおごりでいいよ」

(主人公)「そうか。……ありがと」

(友人) 「どうした、焼肉じゃ不満か? なんでそんなに暗いんだよ」

(主人公)「実は……ついさっき、彼女と別れてきたんだ」

あくまで一例ですが、原文にあった不自然さは薄まったはずです。

「競馬」や「焼肉はおごり」など、ほかの要素を持ち込むことで、会話がよりリアルになりました。

なにより、書き手にとって都合の良い会話文にならないようにしています。

もちろん、小説ですから、ある程度の「段取り」を用意することは必要です。

ただし、段取りをつけるとき、いかに自然に書くことができるかが大切ですね。

物語の現実を壊さないためにも、「次の展開に向けて準備している様子」を読み手に悟られてはならないのです。

物語を展開させる上で、特定の状況を作る必要にせまられたとき。

これを紡いだり、取り繕ったりする作業は、書き手にとって重要な仕事のひとつです。

とくに、会話文がその役割を果たすときは、注意しなければなりません。

物語の現実を壊さず、なるべく自然な会話になるよう工夫しましょう。

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