【三人称の書き方】完全客観型
今回は、三人称の完全客観型についてご紹介します。
完全客観型とは、語り手の視点を固定し、中立な立場で物語を進める書き方です。
この書き方の特徴は、徹底した客観性にあります。
よくいわれているイメージは、「定点カメラ」です。
語り手の視点を一点に固定するのはもちろん、被写体(登場人物)との距離も一定に保ちます。
主観を排除しているため、同時刻に別々のストーリーを進行することも、登場人物が知らないはずの情報を読み手に知らせることもできます。
定点カメラによってありのままの状況を書き記すことができるので、作品の情景や状況、場面に焦点を当てたい場合には有利に働きます。
一方で、この書き方にはデメリットもあります。
良くも悪くも、完全客観型は「定点カメラのフレーム」に縛られてしまうのです。
その枠組みから一度でも外れてしまうと、強みであるはずの客観性が崩れてしまいます。
おじいさんとおばあさんが桃を切ってみると、その中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。
きっと、神さまからの贈りものにちがいないと、おじいさんとおばあさんは大喜びしました。
「きっと、神さまからの贈りものにちがいないと」の部分は、登場人物の内的な部分を表しています。
完全客観型では、登場人物の内面を描写することはできません。
論者によってさまざまな解釈があるものの、原理にそって考えると、これは主観に干渉しているといえます。
完全客観型において、登場人物の心理や心情の描写することはNGなのです。
しかしこの場合でも、とある工夫を施すことでかんたんに対策できます。
おじいさんとおばあさんが桃を切ってみると、その中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。
「きっと、神さまからの贈りものにちがいない」
おじいさんとおばあさんは大喜びしました。
客観的な情景描写のみで勝負する完全客観型でも、このように登場人物に喋らせることで内的な部分を表現できるのです。
これはあくまでかんたんな例であって、登場人物の表情や行動を描写するなど、婉曲的に感情を表現させる方法はいくらでもあります。
まずは、語り手が定点カメラとしての役割を果たすことに意識することが重要です。
主観性を排除し、客観性を徹底する。
その客観性が失われないように注意しましょう。
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