小説における「人称」について
人称とは、話し手や聞き手の立場、あるいは人や物の役割を区別するためにあります。
スムーズな理解に及ばないかもしれませんが、心配は要りません。
文法用語の定義について考え出すといくら時間があっても足りないため、的を絞りましょう。
そこで今回は、小説における「人称」について、かんたんにご紹介します。
ひとつの理解として、小説における「人称」=語り手の視点と捉えておきましょう。
ようするに、誰を中心に物語が進行していくのか、そしてそれをどのようなスタイルで伝えるか、ということです。
主な種類としては、3つに大別できます。
一人称小説
これについては、ご存知の方も多いかと思います。
語り手が「自分」のことを指しながら物語が進むスタイル、これを一人称小説と呼びます。
語り手は「ぼく」「おれ」「私」「あたし」など、一人称代名詞を使います。
もしくは「田中は……」などといったように、固有名詞でもって自分を指す場合もあるでしょう。
いずれにしても、一般的に「語り手=自分=主人公」となるのが、このスタイルです。
三人称小説
これもまた、なじみのあるスタイルですね。
ピンとこない方は、『桃太郎』の書き出しをイメージしてください。
「昔々、あるところに……」と始まりますね。
このように、語り手が語り手としての役割をまっとうするのが三人称小説です。
特長としては、語り手が物語に関与するわけではないのに、まるで全てを見通しているかのような書き方になることです。
このことから三人称小説は、神の視点とも呼ばれています。
「彼」や「彼女」、それから「固有名詞」などを使いながら物語が進んでいきます。
二人称小説
最後は、二人称小説です。
「一」「三」ときて、また「二」に戻ったのは、これがとてもめずらしい書き方であるからです。
文法上の二人称とは、「君」や「あなた」など、受け手のことを指します。
つまり二人称小説では、語り手が「君」や「あなた」を使いながら、物語を進めていくのです。
小説とは少し離れますが、ロールプレイングゲームの取扱説明書や、プロローグで表示される内容がわかりやすいです。
「勇者である君は、この街を救うべく、魔王と対決することになる」
このように、語り手が、読み手(聞き手)や作中の登場人物に語りかけるような書き方をします。
最後に
ここまでご紹介したのは、最低限知っておくべきレベルの内容です。
「こんなもの知っていて当たり前」という意味ではありません。
「あらかじめ蓄えておくべき基礎知識」という意味です。
人称の知識は、書くときだけでなく、小説を読むときにも役立ちます。
「これは○人称の視点で書かれているな」といったように、書き手側に立って考えられるからです。
とくに二人称小説は、書き方への理解がなければ楽しみが半減してしまいます。
小説の構造を把握するためにも、今回の内容はしっかり押さえておきましょう。
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