「描写」に必要な感覚

今回は、小説における「描写」について考えます。

あらかじめ注意しておきすが、物事の細部を詳しく書くことが描写はではありません。

この部分を履き違えてしまうと、書き手は「描写」のつもりで書いているのに、読み手にとっては「ムダな説明」でしかないといった状況になりかねません。

本質をとらえた描写にするためには、とある感覚を身につけなければならないのです。

突然ですが、この文を読んでください。

「誰もいない森で倒れた木は、どんな音がするのか」

これは、哲学における古典的な命題です。

とても有名なので、見聞きしたことがあるかもしれません。

もちろん、ここで哲学的なことを掘り下げるつもりはないので安心してください。

この命題をもとに、「描写」について考えていきましょう。

まず、「誰もいない森で倒れた木」をイメージしてください。

その様子、映像が頭に浮かぶはずです。

今あなたがイメージした映像こそが、描写の目的です。

「根元が朽ち、全体の角度がどんどんきつくなっていく様子」

「葉や枝の擦れ、地面に叩きつけられた大木のけたたましい音」

このような内容をわざわざ書き加えなくても、その映像がイメージできているでしょう。

つまり、細部は読み手自身が頭に描くのですから、書き手がすべてを網羅しようとする必要はないのです。

これは「読み手のことを考える」という基本を発展させたものですね。

テクニックや語彙力を鍛える前に、この感覚を身につけることが重要です。

描写は、いわば書き手と読み手の共同作業です。

書き手の役割は、どのような映像をイメージさせたいのかを考え、そのきっかけを与えることです。

細かな様子を書こうと意気込んでいると、読み手が作り出すイメージを限定してしまいます。

読み手の立場を念頭におきながら、魅力的な世界を生み出しましょう。

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