文章の時間軸を操作する
文章では、起こった出来事をそのまま書き写す必要はありません。
むしろその書き方では、物足りない文章になってしまうことがあります。
そこで書き手は、文章の時間軸を操るのです。
時間軸を操ると、いったいどんな効果が得られるのでしょうか。
夏物の洋服を買うため、街へ出かけた。
その道中、大学時代の友達に遭遇した。
近くのカフェに入店し、時間を忘れるほど話し込んだ。
ふと気づくと、すでに洋服店の閉店時間が過ぎていた。
結局、買い物はできなかった。
この例文の時間軸を書き出すと、以下のようになります。
1. 洋服を買うために、街へ出かけた。 2. 友達と遭遇した。 3. カフェで話し込んだ。 4. 洋服店の閉店時間が過ぎていた 5. 買い物はできなかった。 |
このように、起こった出来事を時間軸にそって書けば、読み手にとってわかりやすいかもしれません。
ただし、少々おもしろみに欠けます。
時間軸を操ってみましょう。
街中で、大学時代の友達と遭遇した。
近くのカフェに入店し、時間を忘れるほど話し込んだ。
本来は、夏物の洋服を買うために出かけたのだった。
ふと気づくと、すでに洋服店の閉店時間が過ぎていた。
結局、買い物はできなかった。
例文1と比較して、時間軸にそった流れを見てみましょう。
例文1 | 例文2 | |
1 | 洋服を買うために、街へ出かけた | 街中で友達と遭遇した |
2 | 友達と遭遇した | カフェで話し込んだ |
3 | カフェで話し込んだ | 本来は、洋服を買うために街へ出かけたのだった |
4 | 洋服店の閉店時間が過ぎていた | 洋服店の閉店時間が過ぎていた |
5 | 買い物はできなかった | 買い物はできなかった |
文章の抑揚が大きくなり、読み物としてのおもしろみが増しました。
時間だけではなく、本来の目的も忘れるくらい、友人に対して熱い想いを抱いている様子も表すことができています。
人の目に触れる読み物としては、例文2のほうが適切でしょう。
自由に書ける文章では、物事を順番どおりに並べる必要はありません。
読み手を楽しませるには、むしろ順番を入れ替えたほうが良い場合もあるのです。
今回ご紹介したのは、構成によって文章にアクセントを加える方法のひとつです。
時間軸を操作することで、平坦な文章に抑揚をつけましょう。
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