古い言葉を使って「深み」を演出する
今回は、表現の「深み」を演出する方法をご紹介します。
小説を執筆していると、手垢のついた表現を使いたくないと思うときがあります。
たとえば、このような文です。
あきらめた僕に残ったのは、夜の雨の冷たさだった。
感情にさまざま含みをもたせながら、意味を置きにいくような書き方をしたいのでしょう。
しかし、これでは物足りない印象があります。
そのような場合は、古い言葉を使ってみましょう。
ここでの「古い言葉」とは、古語や雅語、あるいは大和言葉と呼ばれるものを指します。
古い言葉を使って、原文を書きかえてみます。
思い限った僕に残ったのは、小夜時雨の冷たさだった。
いかがでしょうか。
書きかえたのは、次の箇所です。
● 「あきらめた」 ⇒ 「思い限った」
● 「夜の雨」 ⇒ 「小夜時雨」
「表現の深み」という点において、原文とは見違えるほど大きな変化があります。
このように、古い言葉は、文章の凡庸さを解決する力があるのです。
もちろん、古い言葉は、一般的な表現とはいえないものがほとんどです。
馴染みのなさ過ぎる表現は、かえって意味が伝わりづらくなるでしょう。
それに加え、古い言葉を使うには、正しい意味を知っていることが前提になります。
たとえば、例に挙げた「時雨」です。
時雨は、秋の終わりから冬の始めにかけて降る雨を指します。
「冬」を意味する季語でもあるため、真夏の通り雨などには使わないほうが賢明ですね。
古い言葉は、手垢がついた表現を避けながら、そこに深みを与えることができます。
身近に感じられない表現が多くあり、使い方にも細心の注意が必要ですが、表現のバリエーションを増やすにあたって有効な手段といえます。
古い言葉から得た語彙力は、あなたの作品にポジティブに作用するはずです。
古語や雅語、そして大和言葉について、造詣を深めましょう。
■ 参考
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