強調したい場面で「触覚」を意識する【目立たせる技術】
「触覚」は、五感のなかでもっとも体感性の高いものです。
この特性を活かしながら文章に盛り込めば、書き手はその内容を強調することができます。
それは直感的な強調というよりも、読み手に与える印象をコントロールするという意味での強調になります。
ここでは、「触覚」を使って強調するテクニックをご紹介します。
「さわる」は確認作業
目の前に「得体の知れない物体」があったとしましょう。
目や耳を使い、様子を窺いながら近づくはずです。
距離が縮まったら鼻を利かせ、匂いでその正体を判断しようとしますね。
口に入れる前に、手で触れることで「それが何であるか」を確かめるでしょう。
つまり私たちにとって「さわる」という行為は、確認作業のひとつです。
これによって対象物の造形や質感、温度などを認識します。
「触覚」を文章に落とし込むときは、この性質を利用しましょう。
「触覚」は強烈な印象を与える
例文を見ながら考えましょう。
例
バナナを食べた。
この内容からは、触った様子やその感覚は伝わりません。
「触覚」を意識しながら書きなおしてみます。
例
バナナの表皮は滑らかな肌のようだった。
先をつまんでゆっくりと裂く。意外に、固い。
露になった果実は、ぬるぬるとした湿り気を帯びている。
唇でそっと包み込むと、すべてをあきらめるようにほぐれた。
「バナナを食べた」にはない、生々しさがありますね。
このように触覚を意識して描くと、読み手に強烈な印象を与えることができるのです。
バナナのように、得体の知れない物体でなくともかまいません。
書き手は、触ることを通じた確認作業を意識することが大事です。
そこにあるプロセスは、そのまま文章の内容として描くことができるからです。
強調したい場面に取り入れる
「触覚」は、五感のなかでもっとも身体的な行為といえます。
一方で、人やものに触れたときに感受することや、思索することも沸きあがってきます。
つまり「触覚」を取り入れることで、身体から心境への導線が結ばれるのです。
したがって「触覚」は、強調したい場面に用いると効果的です。
文章では、対象となる人やモノに興味を引かれ、距離がもっとも近づく瞬間を描くことになるでしょう。
内容を濃密に描くことができ、抑揚をつけることも期待できます。
強く伝えたいときには、「触覚」を意識して取り入れてみましょう。
■ 参考
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