修飾語と被修飾語の距離

2019年8月20日

 

修飾語とは、文字どおり「飾る言葉」のことをいいます。

主な役割は、他の文節や言葉を詳しく説明することです。

 

それに対して、飾られる言葉を被修飾語といいます。

修飾語の内容を受けて、文の核となる存在です。

 

さて、今回考えるのは「修飾語と被修飾語の距離」についてです。

まずは例をみてみましょう。

 

色使いが美しい古びた美術館にあった絵画が忘れられない。

 

色使いが美しいのは美術館でしょうか。

それとも、絵画でしょうか。

 

「色使いが美しい」が修飾語であることは間違いないですが、この文からは被修飾語となる語句が判断できません。

もしも「絵画」を被修飾語とするのであれば、このように書くべきです。

 

古びた美術館にあった色使いが美しい絵画が忘れられない。

 

修飾語の距離を変えることで、被修飾語が「絵画」であると判断できます。

このように、修飾語と被修飾語の関係を明確にしなければ、読み手は文章の意味を読み取ることができません。

そして、その距離は近いほうがわかりやすいのです。

 

 

英語では関係詞(thatやwhichなど)があるので、あえて修飾語と被修飾語の距離に気を配る必要はありません。

しかし日本語には、関係詞にあたる言葉がないのです。

 

同じような役割を果たす用法はあるものの、英語ほどわかりやすい構造ではありません。

さらに、日本語は語順がバラバラでも意味が通じてしまう場合が多いので、あまり重視されないのです。

 

わかりやすい文章を書くために、まずは語句の位置関係を見定めなければいけません。

そして、修飾語と被修飾語をなるべく近い距離におくことが必要です。

日本語を母語とするからこそ、私たちはこのことに気づきにくいのかもしれません。

修飾語と被修飾語の距離に注意しながら、執筆に臨みましょう。

 

 

Posted by 赤鬼