修飾語と被修飾語の距離
修飾語とは、文字どおり「飾る言葉」のことをいいます。
主な役割は、他の文節や言葉を詳しく説明することです。
それに対して、飾られる言葉を被修飾語といいます。
修飾語の内容を受けて、文の核となる存在です。
さて、今回考えるのは「修飾語と被修飾語の距離」についてです。
まずは例をみてみましょう。
例
色使いが美しい古びた美術館にあった絵画が忘れられない。
色使いが美しいのは美術館でしょうか。
それとも、絵画でしょうか。
「色使いが美しい」が修飾語であることは間違いないですが、この文からは被修飾語となる語句が判断できません。
もしも「絵画」を被修飾語とするのであれば、このように書くべきです。
例
古びた美術館にあった色使いが美しい絵画が忘れられない。
修飾語の距離を変えることで、被修飾語が「絵画」であると判断できます。
このように、修飾語と被修飾語の関係を明確にしなければ、読み手は文章の意味を読み取ることができません。
そして、その距離は近いほうがわかりやすいのです。
英語では関係詞(thatやwhichなど)があるので、あえて修飾語と被修飾語の距離に気を配る必要はありません。
しかし日本語には、関係詞にあたる言葉がないのです。
同じような役割を果たす用法はあるものの、英語ほどわかりやすい構造ではありません。
さらに、日本語は語順がバラバラでも意味が通じてしまう場合が多いので、あまり重視されないのです。
わかりやすい文章を書くために、まずは語句の位置関係を見定めなければいけません。
そして、修飾語と被修飾語をなるべく近い距離におくことが必要です。
日本語を母語とするからこそ、私たちはこのことに気づきにくいのかもしれません。
修飾語と被修飾語の距離に注意しながら、執筆に臨みましょう。
ディスカッション
コメント一覧
失礼します。
修飾語と被修飾語の距離の近さ遠さが文の自然度にいかなる影響を与えるのか、といった内容の論文を書いている先生はいらっしゃいますでしょうか?
参照したいのですがなかなかお目にかかれず困っています・・・
たき さま
書き込み、ありがとうございます。
私自身そのような内容が書かれた論文を読んだことがなく、参考になりそうな文献を探してもみましたが見つけられませんでした。
お力になれず、申し訳ございません。
「修飾語と被修飾語の距離」よりも、「文章の自然度」に着目すると幾分かは見つけやすいのかなと感じました。
(たとえば、ディープラーニングによる文章の自動生成など……)
なにかのヒントになれば幸いです。
今後、知り合いの大学教授にも声をかけてみようと思います。
見つかり次第、こちらにてご報告いたします。
文章の鬼
たき さま
「文章の自然度」という観点から、連語(コロケーション)に着目しました。
成句を含め、「修飾語と被修飾語の距離が遠ければ連語として成立せず、自然度に影響を与えるのではないか」と考えたからです。
すでにお読みになっているかもしれませんが、こちらの論文を参考にしてください。
■ 日本語コーパスとコロケーション ―辞書記述への応用の可能性― 田野村忠温
コメントをいただいてから時間がたっていますし、的外れな提案でしたら申し訳ございません。
今後とも、よろしくお願いいたします。
文章の鬼