「書かない内容を決める」こと
作品のなかで、どのようなことを描くか。
書き手は、常にこれを選択しながら執筆するでしょう。
実はこのとき、書き手が意識するかどうかは別として “とある選択” がなされています。
書く内容を決めることは、書かない内容を決めることでもあるのです。
たとえば「10才の女の子」を主人公とした物語を書くとしましょう。
この場合、彼女の身の回りで起きる出来事や、その目線からみる景色しか描けなくなります。
もちろん考え方や価値観も、「10才の女の子”ならでは”のもの」になると考えるのが自然でしょう。
書けば書くほど、この作品は「10才の女の子の物語」として形成されていくのです。
これは、物語の設定によって大きく変わることですね。
極端にいえば、書き手が設定した以外の物語を捨てることになるのです。
10才の女の子を描いた作品は、前提として「20歳の大学生」や「定年を迎える男性」の物語にはなり得ません。
「20歳の大学生」や「定年を迎える男性」を物語に登場させるとしても、「10才の女の子」というフィルターを介して描かれるべきであり、彼らが物語をのっとることはないはずです。
逆説的に考えると、書き手は一度捨てたものを書くことができなくなるわけですね。
住宅を建てるために土地を買い、基礎工事まで済ませたのにもかかわらず、途中からそこにビルを建設することはできません。
無理に建設工事を進めたとしても、そうして出来あがった建設物はまともな状態ではないと考えるのが自然です。
これはそのまま、小説の執筆になぞらえることができます。
「10才の女の子」を主人公とした物語を書くのであれば、その流れにそって書くべきです。
いいかえれば、「物語を書き始めた瞬間からすでに内容が限定されている」ということになりますが、一概にネガティブと捉える必要はありません。
書き手にとっては、物語が必要するものを判断する基準にもなるからです。
場面や展開を考えるとき、「書かない内容」や「書けない内容」を把握しておくだけでも、横道にそれることなく書き進めることができます。
不要であったり、不適切であったりする内容は捨てて、「書くべき内容」に重きをおきましょう。
■ 参考
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