「タイトル主導」で物語を書く
今回は、「タイトル主導」で構築するための基本メソッドをご紹介します。
タイトル主導といっても、『こころ』のように大きなテーマをもって書く物語ではありません。
「ある程度の具体的な内容」が読みとれる物語を、タイトルから組み立てていくための方法ですね。
書くためのステップとしては、大きく3つに分かれます。
ステップ1は、言葉の選定です。
ここで活用すべきは、前回ご紹介した方法です。
作成した異質な言葉をタイトルにすると、ほとんど自動的に「おもしろい設定」で物語を考えることができます。
前回の記事で出来あがった言葉は、次の5つでした。
● 会いたい海辺
● 風が吹く人
● 彼女の音
● 食べたい秘密
● 青いパンケーキ
タイトルとなる言葉をひとつ選んで、物語の主軸におきます。
選んだ言葉をタイトルとして書きすすめますが、もちろんあとで変更してもかまいません。
いずれにしても、これを主軸に構築していくと、おのずと「独特な観点」からスタートすることになります。
これは、作品のオリジナリティにもつながるポイントです。
今回は、「青いパンケーキ」で考えてみましょう。
ステップ2は、つじつま合わせです。
物語としての整合性をとるために、書き手は「パンケーキがなぜ青いのか」を明確にしなければなりません。
着色料を使って青くしたのであれば、あえて食欲を減退させる色にする理由が求められますね。
あるいは「青」といっても色味のことではなく、「青春」や「若さ」をあらわしているのかもしれません。
そうであるならば、パンケーキを大きな要素としながら、相応のドラマを作ることも必要です。
物質的な青と、精神的な若さをかけあわせても良いでしょう。
つじつまを合わせるために、書き手が思いつくさまざまな要素を物語に加えていくのです。
このステップは、物語の構成に大きくかかわる部分でもあります。
ボリュームがほしいのであれば膨らませなければならないでしょうし、短編やショートショートであればコンパクトにまとめることを求められます。
作品の出来栄えを見据えて、異質な言葉の整合性をとる。
このステップを通過してしまえば、物語はほとんど完成したといって良いでしょう。
ステップ3は、仕上げです。
これまでのステップは、どちらかといえば、特殊なテーマや奇抜な舞台設定などの「発想」や「アイディア」の扱い方に重きをおいていました。
最後のステップでは、直接的な文章力が求められます。
「登場人物の描き方」や「描写の方法」はもちろん、「場面のつなぎ」や「表現の選び方」など、まさに文章術で語られるようなことに注力するのです。
そのなかには、いかに読み手の疑問を解消していくかも含まれます。
あべこべな組み合わせを提示された読み手の頭は、疑問でいっぱいになっています。
読み手の「?」をほぐしていく過程そのものが読みどころであり、疑問が解消されたときは大きなカタルシスを得られる部分でもあります。
前フリのかけ方や、オチをつけるタイミングなど、総合的なマネージメントを書き手が考えるのです。
以上の3ステップをもって構築すれば、物語は成立します。
タイトル主導で書く場合、作品全体の結びつきが強くなり、世界観を浸透させやすくなります。
そこに異質な言葉を用いることで、普通ではないアプローチから物語を構築することができるのです。
ひとつの基本メソッドとして、創作活動の参考になればと思います。
■ 参考
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