哲学や思想を浸透させる
今回は、創作における哲学や思想について考えます。
ここでいう「哲学」や「思想」は、学問としての意味ではなく、物語を構成するときの心構えとして扱います。
物語に一貫性をもたらすには、哲学や思想を浸透させる必要があるのです。
これについて、詳しく説明します。
物語に哲学や思想が浸透していれば、抽象的な概念の扱いが変わります。
わかりやすいところでは、「死」です。
「主人公の恋人が事故によって亡くなってしまった」としましょう。
書き手がこれを「悲しい出来事」として描くのであれば、それを根底において話を進めるべきですね。
そうなれば、細かな物事の扱いも変わります。
喪失感に苛まれた恋人の心情は、ある程度限定された描き方になるでしょう。
恋人の遺品は、二人の思い出を想起させるアイテムになるはずです。
このように、哲学や思想を浸透させることで、物事の描き方が具体的になります。
これがちぐはぐになってしまうとしたら、どうなるでしょうか。
何の脈略もないまま、主人公が元気になったり、突然遺品を捨てたりすると、物語としての一貫性が失われてしまいます。
読み手には「なぜ?」という疑問が残り、理解に支障がでてしまいますね。
もちろん、抽象的な概念を変質させることもあります。
その場合には、相応の理由を設定しなければなりません。
喪失を乗り越えた主人公に、新たな恋人ができたとか。
恋人が長い間浮気をしていて、自分が二番手以降のパートナーだったことが判明したとか。
抽象的な概念の捉え方を変えるには、それを象徴する出来事を起こしたり、また別の環境で物語を進めたりといった、そういった構造を用いるわけですね。
理由を一から十まで説明するのではなく、構造をもって読み手を納得させるのです。
哲学や思想は、物語を組み立てるときの大前提になります。
土台というよりも、地質のようなものです。
それは世界観の構築にも通じることであり、書き手の作風にも影響する部分です。
物語は闇雲に考えるのではなく、書き手の哲学や思想を浸透させながら組み立てていきましょう。
■ 参考
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