登場人物の「両極性」を考える
登場人物のパーソナリティを設定するときには、両極性をもっているかどうかがポイントになります。
これを主軸にしながら、考えていきましょう。
例としてわかりやすいのは、「ヒーローvs悪役」の構図ですね。
異なる目的をもった両者を同時に登場させることで、物語に対立構造をつくるわけです。
しかし実のところ、単純な二項対立を作ることはかんたんではありません。
なぜなら、世の中は「善悪をはっきり区別できないこと」のほうが圧倒的に多いからです。
このようなあいまいな関係は、小説にとっておいしい題材になります。
たとえば、「経営者が成りあがる物語」を書くとしましょう。
物語の主人公は、その独特なセンスをもって革新的に会社運営をしていきます。
両極性をもたせるためにも、「主人公とは真逆の考えをもった人物」を登場させます。
そこで「兄と一緒に親の事業を継いだ」という設定にして、経営方針について兄と主人公を対立させましょう。
● 主人公 革新的な性格
⇒ 会社を成長させるため、イノベーションを起こそうとする
● 主人公の兄 保守的な性格
⇒ これまでのやり方を継続し、現状を維持しようとする
時代の傾向にあわせた経営をするには、革新的な考えが必要です。
その考えと対立させるために、保守的な兄を登場させました。
これらの考えが激しくぶつかれば、物語に「大きな葛藤」がもたらされます。
大きな葛藤があれば、展開も複雑になり、物語は盛り上がるでしょう。
つまり、登場人物の両極性からドラマが生まれるということです。
ただし、保守的な考えが必ずしも悪いわけではありません。
伝統を守ろうとする態度はとても尊く、忘れてはならないものです。
一見、真逆の立場であるように思えますが、それぞれに正当性があるのです。
これもまた、重要なポイントですね。
登場人物に両極性をもたらすだけで、物語が駆動するわけではありません。
書き手は、それぞれの主張をふまえて、問題を具体的に解決しなければならなくなるのです。
ある方向に舵を切ったとき、失われる過去と待ちうける未来。
現状を維持すると決めたとき、失われる未来と守られる過去。
書き手はその振り幅や、メリット・デメリットを見据えながら、物語を構築していくのです。
これは、物語を盛り上げる要素であり、読み手に考えさせる深みでもあり、作品のおもしろさにつながる要素でもありますね。
両極性をもった登場人物を設定することによって、これが実現できるのです。
別のパーソナリティをもった人物をひとりでも登場させれば、物語の質は劇的に向上します。
登場人物のキャラクターを設定するとき、書き手は「両極性」について考えてみましょう。
■ 参考
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