主語を絞り込む
主語を明確にすることは、日本語の文章における鉄則のひとつです。
しかしこれを意識しすぎると、主語を乱用した文章になってしまいます。
例文を見ながら考えていきましょう。
主語となりえるのは、「商売」と「お金」ですね。
文法としては間違っておらず、内容の意味もわかります。
しかしこの文は、書き手が伝えたいことを読み取りづらい文章になっています。
なぜなら、読み手の立場で考えたとき、二つの主語を読み取らなければならないからです。
主語を変えれば、読み手の視点も変わります。
せったく視点を変えても、どちらの主語も格助詞「が」でつながれているため、強調したい部分がつかめないのです。
同等の言葉を並列させたいならまだしも、これではただ情報を載せるだけの書き方です。
読みどころのない退屈な文章になっているのです。
少し工夫してみましょう。
● 商売が繁盛して、お金を儲けた。
● 商売を繁盛させて、お金が儲かった。
どちらの例を読んでも、格助詞「が」でつながれた主語はひとつだけですね。
このように書き換えれば、主語を絞り込むことができます。
①では「商売」が主語になっているため、「商売を繁盛させたこと」が強調されています。
それに対して②では、「お金が儲かったこと」に重きをおくような書き方になっています。
このように、書き手が伝えたい内容にあわせて、文章の読みどころは変えられるのです。
いずれの場合も、伝えるべき主軸をはっきりさせることで、文章が立体的になりました。
同時に、読みどころを作ったため、伝えたい内容が明確になったのです。
ポイントとなるのは、格助詞の使い方です。
どの言葉も「が」や「は」でつないでしまえば、文章は平坦な印象になります。
多くの場合、改善文のように「を」を使うことでこれを回避できます。
必然的に文末表現を変える必要が出てきますが、好意的に捉えましょう。
表現のバリエーションを増やして、文章を立体的にする要因のひとつになっているからです。
伝えたい内容、強調したい部分、読ませたい箇所。
繰り返しになりますが、まずは書き手がこれらを明確にする必要があります。
その上で、格助詞を上手く使いながら、主語を絞りこみましょう。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません