ストーリーの「独自性」にこだわらない
小説を読むときの醍醐味のひとつが、「ストーリー」ですね。
書き手は、読み手をうならせるようなストーリーを必死に考えるでしょう。
そこでこだわるのは「独自性」で、要するに「似たような物語が他にないか」に気を使うのです。
しかし結果からいえば、ストーリーに独自性を求めるのは無駄なことです。
そもそも、不可能である
唯一無二のストーリーを考えるとしましょう。
すると、小説だけでなく、映画や漫画、アニメにも目を通して、重複がないようにチェックしなければなりません。
世に出ているすべてのストーリーを照会するとなると、さすがに現実的ではないのです。
さらにいえば、だいたいのアイディアはどこかの誰かが作品に反映しています。
しかも多くの場合、そのストーリーの型は反復されているのです。
まったく別の作品に見えたとしても、物語の筋は共通していたり、あるいは少し変形させただけだったり。
そこに独自性を盛り込むのは、まさに至難の業です。
もちろん、書き手としての「ひらめき」は大切にすべきです。
斬新で画期的なストーリー展開を思いついたのであれば、すすんでチャレンジすべきです。
しかし、それはもはや「発明」や「イノベーション」の領域です。
そこで勝負できるのは、恵まれた才能をもった一部の書き手に限られるでしょう。
ストーリーに「独自性」はあるのか
いくら反復されているからといって、誰かのアイディアを盗むことはできません。
では、どうすればストーリーに独自性を盛り込めるのでしょうか。
世の中に出ているなかでも、独創的な作品。
その内容を分析してみましょう。
● たった1人の生き残りを賭けて、クラスメイト同士で殺しあうこととなった
● 全国にいる「佐藤さん」を鬼役として、命を賭けた「鬼ごっこ」が始まった
● 命令に従わなければ殺される、凄惨な「王様ゲーム」に参加することになった
どれも、有名なヒット作のことを指しています。
これらのストーリーをざっくりと比べてみましょう。
→ 平穏に暮らしていた中、苦難が訪れ、死の危険を乗り越え、結末を迎える
実のところ、これだけ有名な作品でもストーリーの展開はそう変わり映えしないのです。
決して、作品をけなしているわけではありません。
それぞれの設定や登場人物、細かな展開や結末は異なるにしても、大筋で共通する部分があることは確かです。
独創的なのは「設定」であり、ストーリーそのものに独自性があるとはいえないのです。
ここで理解すべきなのは、ストーリーは「起承転結」のように定型化されたものだということです。
似たような展開の作品でいえば、『桃太郎』が当てはまりそうですね。
比喩ではなく、私たちは千年以上も前にできた型を日常的に使っているのです。
つまり、独自性を求める対象はストーリーではないのです。
開きなおることが重要
冒頭のくりかえしになりますが、ストーリーに独自性を求めるのは無駄なのです。
そうなれば、いっそのこと開きなおりましょう。
「このストーリーは、すでに誰かが書いているだろう」
「他の要素にこだわることで、何か特別なものを書けるはずだ」
「それが独自性となり、小説の魅力として読み手に伝わるはずだ」
他の要素とは、たとえば舞台の設定やキャラクターの人格、描写や文体などですね。
これらを活かすよう心がけることが重要で、ストーリーの構成や展開はあとからついてくるものです。
結果として、作品に「独自性」が生まれるのですね。
書き方において絶対的な正解はないものの、前述した「発明」や「イノベーション」を追い求めるよりは、よっぽど現実的です。
ストーリーの在り方、とくに「独自性」にはとらわれないようにしましょう。
そこに時間をかけると、ほとんどの場合は徒労に終わってしまいます。
他の要素に力を注げば、より良い作品が書けるはずです。
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