「回想」について

 

今回は、回想について考えていきましょう。

回想を利用すれば、物語のなかにさまざまな場面を取り入れることができます。

ある意味では「隠し技」のようなもので、書き手としてはとても便利に活用できる手法です。

 

しかし結論からいえば、回想を使うことはおすすめできません。

もっとも大きな理由は、書き手の意識が「主人公の心情」のみにフォーカスされてしまうからです。

 

 

具体的に考えていきましょう。

 

回想は、主人公の正当性を確保するために用いられる傾向にあります。

書き手として、回想を使う意図を考えてみてください。

その裏側に「こんな背景があったから今ではこうなったんだ」というようなメッセージが込めているのではないでしょうか。

 

「手軽に読み手を納得させることができる」と考えれば、有効な手法に思えます。

しかし、主人公の正当性を示したいのであれば、回想によって時系列を前後させないほうが良いでしょう。

 

回想で描かれる内容や、そこから導かれる主人公の現状は、「既存の事実」として扱うことになります。

読み手からすれば「そういうことなんだ」と理解せざるを得ないのです。

 

本当の意味で読み手を納得させたいのであれば、時系列に並べながら、場面を経過順に組み立てるべきです。

■ 場面は経過順に組み立てる

 

時系列に並べて書くとなれば、順を追って構築しなければなりません。

書き手からそれば、そこに「一定の論理性」が求められるわけです。

 

くり返しになりますが、回想を使う書き手は、主人公の心情のみにフォーカスされます。

これは、書き手が「主人公の側に立っている」といいかえることもできますね。

時系列に並べていくなかで「一定の論理性」を求められれば、書き手は冷静になります。

主人公の心情を、客観的かつ相対的に考えながら執筆することができるのです。

 

かんたんにいえば、物語の流れから読み手に「なるほどこうなるのか」と納得させることができます。

「こんな背景があったから今ではこうなったんだ」と省略するよりも、読み手は主人公に同調しやすくなるでしょう。

結果として、描いた内容の説得力は増していきます。

 

もちろん、回想は使われている作品は数多くあるため、この手法が禁忌というわけではありません。

ただし、それは前提として書き手の緻密な計算があってのことで、決して安易に使えるものではないのです。

回想に頼ることを優先するのではなく、まずはひとつずつ論理を積み重ねてみましょう。

 

■ 参考

 

創作

Posted by 赤鬼