「書くと決めた内容」を作品に浸透させる
前回、「書く内容を決めることは、書かない内容を決めること」とご紹介しました。
今回はこのことについて、もう少し具体的に考えてみましょう。
「書かない内容」は、設定や場面といった”大きなくくり”のみで考えれば良いわけではありません。
物語の細部にいたるまで、徹底しなければならないのです。
今回もまた、「10才の女の子」を主人公とした物語で考えてみましょう。
物語が進むなか、主人公である10才の女の子が「物思いにふける場面」を描くとします。
もちろん、書き手自身がこの場面を「必要」と感じたのであれば、描くのは自由です。
しかし、たとえば「2階のベランダから通りを眺める」といったように描くのはナンセンスといえるでしょう。
なぜなら、10才の女の子であれば、身長がそれほど高くないと考えられるからです。
半ば「よじ登るような体勢」をとらなければ、ベランダから通りを眺めることはできません。
その状態で「10才の女の子が物思いにふける」という展開は、あまりにも不自然なのです。
ベランダの構造によっては、子どもの身長でも景色を眺められるように作られていることもあるでしょう。
ただしその場合でも、「10才の女の子が物思いにふける」にあたっての必然性を含めて、読み手に理解してもらえるよう描かなければなりません。
こうした事情を考えると、「学校の2階から校庭を眺める」や「ブランコに揺られながら」など、ほかにもっと良い描き方があるように思えてくるわけです。
絶対的な正解はありませんが、「2階のベランダから通りを眺める」といった構想は、ややもすれば「書かない内容」や「書けない内容」に手をかけている可能性が高いのです。
書き手が設定した内容は、物語の細部にまで強く影響します。
設定やテーマ、場面や展開だけでなく、細かな描写まで考慮しながら、書き手はこれを徹底しければなりません。
一瞬でも怠ってしまうと、途端に物語の世界での整合性がとれなくなったり、読み手に納得感を与えられなくなったりするのです。
たからこそ、書かないと決めた内容を避けるのと同時に、書くと決めた内容にそって物語を構築することが大切ですね。
登場人物の設定や考え方、世界観や価値観など、書くと決めたことのすべてを作品に浸透させましょう。
■ 参考
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません