「不調和」がもたらす効果
不調和がもたらす効果について考えてみましょう。
■ 「不調和」を作る
書き手がこれを成立させることができれば、場面に「深み」や「味わい」をかもし出すことができるようになります。
たとえば、次のような場面があったとしましょう。
「カップルが別れ話をしている最中、テレビからお笑い芸人の漫才が聞こえてくる」
本当はシリアスな問題を描く場面でありながら、そこにコミカルな要素が紛れ込んできます。
つまりこの場面には、「シリアス×コミカル」といった不調和が生じているわけですね。
単にシリアスさだけを描くのなら、それ以上でもそれ以下でもないものが生まれるでしょう。
しかし、コミカルな要素が乱入することによって、主題だったはずのシリアスさが包まれました。
すると、そこに含まれる意味合いや赴きが複雑になるのです。
ある人にとっては、その様子が悲しく映るのかもしれません。
またある人にとっては、滑稽に映るのかもしれません。
この場面に対する読み手の解釈は、書き手が与えた意味を超えていくものです。
この現象は「作品が外に開いていくとき」だけに起こることではなく、「細部」にも見られるのです。
もちろん「読み手の評価」と「場面に対する感想」と考えれば、その質は違っているでしょう。
ただし、「書き手が投げかけたものを読み手がどう捉えるか」という意味では同じです。
さらには、「もたらしたものを書き手が操作できない」という意味でも、その原理は共通しているのです。
「不調和による相乗効果」とでもいいましょうか。
不調和が成立した場面には、「不可思議な何か」が横たわることになります。
独特な深みや味わいがあり、言語化が難しいものです。
読み手には、この不可思議な何かがエキセントリックに響いていくことでしょう。
不調和を作るとしたら、書き手はこのプロセスを見据えなければなりません。
つまり、自分が与えた意味を超えていくものを生み出し、読み手の心に何らかの動きをもたせる流れを見据えるべきです。
考えなしに突飛な要素を組み合わせても、あべこべな場面になってしまいます。
緻密な計算のもと、魅力的な場面を構築していきましょう。
■ 参考
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