時間を描写する

 

見たままのモノを写すだけでは、描写とはいえません。

そこで書き手は、読み手の五感に訴えかけるような描写になるよう、自らの感性を研ぎ澄ますのです。

 

こうした工夫や努力は、とても良いことですし、書き手に必要なことです。

しかしながら、描写においては、念頭におかなければならない要素がもうひとつあります。

それは、時間です。

 

「時間を描写する」とだけ聞けば、あまりピンとこないかもしれませんね。

ただし、少し考えると、意外にも単純なことだと気づくでしょう。

 

たとえば、「木」を描写するとしましょうか。

物語の前半では、その木が深々とした緑に覆われている様子を描写します。

後半になり、同じ場所を描写するときには、紅やオレンジに染まった様子を強調します。

 

そうすると、時間は春から秋へと流れたことがわかりますね。

見える景色が変わることで、あえて説明しなくても、読み手に時間の経過を伝えることができるのです。

 

ほかにも、グラスの水滴、気温の変動、道に伸びる影の長さ、ホコリの積もり具合、写真の色褪せ方、Tシャツの首元のヨレなど、時間の経過を間接的に示す要素はたくさんあります。

 

モノの様子は、常に変化していくのです。

この変化は、モノがある空間はもちろん、私たちが見る景色にも影響を与えます。

 

書き手は、このことを感じ取らなければなりません。

敏感であればあるほど、描写のクオリティが向上し、作品全体が潤います。

描写をするとき、見たままのモノだけではなく、時間の経過も感じ取りましょう。

 

創作

Posted by 赤鬼