事実に即した表現を使う
筆が進んでいくなかで、格好をつけたくなる瞬間はないでしょうか。
たとえば、格言に使われるような表現であったり、小説に書かれるような堅い語調であったり。
それを実用文に取り入れて、ムードを演出するのです。
しかし、意気揚々と書き飛ばしていると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。
例を見てみましょう。
原文
霧の正体は、何なのか。
現象としては、雲と同じだ。
地面に接しているかどうか、その違いが両者にはある。
整然とした雰囲気を感じさせる文章ですね。
その雰囲気は、「正体」という単語によってもたらされています。
ただしこの場合、単に「そのメカニズムは雲と同じである」という内容を書いているだけです。
「正体」という単語を使うのであれば、たとえば「水蒸気」だとか、「冷えた空気」といった言葉がなければ成り立ちません。
正体を明かしているわけではないですね。
つまりこの文章は、内容との整合性がとれていないのです。
事実に即した内容に、書きかえてみましょう。
改善文
霧が発生する仕組みは、雲と同じだ。
地面に接しているかどうか、その違いが両者にはある。
無理に格好をつけずに、「仕組み」といった言葉を使って説明しています。
このように書いたほうが、よりシンプルでわかりやすいですね。
決まりの良い表現は、文章の格をぐっと引き上げることがあります。
読み手の意識を文章に向けるための、良いエッセンスとなります。
しかし、それは緻密な計算があってのことです。
例に挙げたように、自分が作ったムードに押されてはいけません。
結果として、事実を捻じ曲げることに繋がってしまっては、本末転倒なのです。
まずは、事実に即した表現を使うよう意識しましょう。
■ 参考
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