文章の「乾湿」を意識する

 

文章そのものを形容する言葉は多々あります。

今回は、そのなかの「乾湿」について考えます。

 

要するに、「乾いた文章」と「湿った文章」ですね。

これらにどのような特長があるのかを見ていきましょう。

 

 

例文1

ツアー中の交通事故によって活動を休止していたバンド「○○」が、約2年半ぶりに公演を行った。

観客動員数は1万人を超え、会場は終始大盛況だった。

 

客観的に伝えるべき文章では、事実にもとづいた表現で書きます。

この場合、「交通事故によって活動を休止していた」「約2年半ぶり」「観客動員数は1万人を超え」ですね。

こうした客観的事実を文章に盛り込んでいます。

 

 

このようにして冷静な態度で書かれた文章は、どことなくドライで冷めているような印象を読み手に与えます。

つまり、「乾いた文章」ですね。

 

乾いた文章のことを文字にして説明するとあまり良いイメージではないかもしれません。

しかし、読み手の解釈に誤差がでないような文章にするためには、こうした筆致で書いたほうがベターなのです。

 

さて、次の例文を見てみましょう。

 

 

例文2

人気バンドの○○が、約2年半ぶりに公演を行った。

ツアー途中の交通事故による活動休止を乗り越え、満を持してのライブだった。

顔を見合わせながら演奏する彼らの様子から、8年間にわたるバンド活動を通じて得た強い絆を垣間見ることができた。

そんな彼らの演奏は、1万人の観客を大いに沸かせた。

 

例文1に比べ、心に訴えかけるものがあります。

これが、「湿った文章」ですね。

 

主な要素をピックアップしてみましょう。

「満を持してのライブ」

「顔を見合わせながら演奏する」

「8年間にわたるバンド活動」

「強い絆」

「1万人の観客を沸かせた」

 

長きにわたるバンド活動のなかには辛く苦しい経験があり、そうした背景をもとに書き進めています。

それを乗り越え、強い絆をもった彼らがようやくステージに立ったとすることで、文章の内容に「人間臭さ」と「ドラマ性」がもたらされます。

 

この「人間臭さ」や「ドラマ性」にフォーカスして書くと、読み手の心情に訴えかけるものが生まれます。

これが感動や驚きの要因となります。

書き手の自由が許される文章では、活躍するでしょう。

 

 

乾いた文章と湿った文章にはそれぞれの特性や特長があり、これらに優劣をつけるつもりはありません。

文章の「乾湿」を使い分けられるようになることが書き手としての目的であり、大事な要素となります。

 

客観的に伝えたい場合は、事実に基づいて書く。

そして、主観的に伝えたい場合は、「ドラマ性」や「人間臭さ」を文章に折りこむ。

こうした使い分けができるようになると、書くことがより楽しくなります。

 

文章の「乾湿」を意識して、執筆してみましょう。

 

 

■ 参考

 

Posted by 赤鬼