上位概念をもって類型化する

ありのままを表現して伝えることが、必ずしも良いとは限りません。

とくに、物事を類型化する場合は注意が必要です。

使われた言葉によっては、読み手が感じとる印象まで類型化させてしまうことがあります。

たとえば、オレオレ詐欺です。

電話口で「オレだけど……」などという声かけによって、息子や孫や夫になりすまして金銭を振り込むように促す詐欺ですね。

オレオレ詐欺は、その様子をわかりやすく抽象化した言葉です。

実際、ひと昔前のメディアでは、このオレオレ詐欺という言葉がよく使われていました。

しかし今では、オレオレ詐欺とは呼ばれていません。

主に、「振り込め詐欺」という言葉が使われるようになりました。

理由は、「オレオレ詐欺」という表現では、多様化する犯罪の手口に対応できないからです。

なりすます対象は親類だけでなく、警察になりすましたり、駅員になりすましたりと、時間が経つごとに手口は巧妙かつ複雑になっています。

実態と呼称が合わなくなったため、警察庁が表現を「振り込め詐欺」に統一したのです。

※ 都道府県によっては「なりすまし詐欺」や「うそ電話詐欺」など、ほかの呼称と併用されている場合があります。

このように、物事を類型化する場合は、きちんとした上位概念をもって包括的に表現することが求められます。

「オレオレ詐欺」のように、その言葉から具体的な内容が読み取れる表現がわかりやすいことはたしかです。

しかし、読み手が感じとる印象までも安易に類型化させてしまえば、さらなるトラブルを防ぐことはできません。

「振り込め詐欺」のようにあえて解釈に幅を持たせた表現のほうが、結果として読み手のためになるのです。

「危険ドラッグ」という言葉が使われるようになったのも同じ理由ですね。

「脱法ハーブ」や「合法ドラッグ」では、法に抵触しない様子を逆説的に連想させます。

実際にはこの危険ドラッグによって数々の自己や事件が起きているため、使用を抑制するべく表現を工夫したわけです。

もちろん、あいまいな表現をもって物事を象徴化するのですから、書き手はこれをデリケートに扱わなければなりません。

たとえば「いじめ」や「セクハラ」を安易に類型化してしまうと、当事者の苦悩が伝わりづらくなりますね。

● 社会にはびこる「上位概念」に注意する

この場合、「振り込め詐欺」のような社会的な抑制機能はなく、ただ物事をあいまいにしてしまって伝わる可能性があります。

発信する内容の性質をみながら、読み手に配慮した表現を選びましょう。


■ 参考

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