色を表現し、描写する
描写において無視できないのが、「色の表現」です。
視覚で得られる情報としては、造形の表現と並んで、重要度の高い要素です。
たとえば、空に浮かぶ「雲」を描写するとしましょう。
色味を交えて表現するのであれば、あなたはどのような言葉を選ぶでしょうか。
真っ白な様子だったり、灰色に淀んだ様子だったり、黒が強い様子を表現する場合もあるでしょう。
しかし「真っ白」「灰色」「黒が強い」と表現するのでは、おもしろみがありません。
そこで、このように表現してみてはいかがでしょうか。
真っ白 ⇒ 「白百合の雲」
灰色 ⇒ 「鳩羽色の雲」
黒が強い ⇒ 「鉛色の雲」
これらが正解であると断言はしません。
ただ、書き手としての「描写らしさ」が増したのは明らかです。
これは、それらしい色を闇雲に当てはめたわけではありません。
描写に使う言葉を選ぶ作業には、かんたんなコツがあるのです。
そのコツとは、自然界にあるものを転用するということです。
白や灰や黒は、色として類型化されたものです。
これを工夫のないまま描写に使ってしまうと、類型化された色、つまり「読み手の頭でイメージできる単純な色」しか表現できません
そうなると、どうにも陳腐な表現になってしまうのです。
そこで、自然界の色味を用いた表現を使います。
「白百合(植物)」「鳩羽(動物)」「鉛(金属)」のような言葉を使うことで、読み手はその様子をより具体的にイメージすることができます。
さらには、表現の薄っぺらさが軽減され、深みをもたせながら伝えられるのです。
やさしいように思えて、なかなか難しいのが色の表現です。
色を描写に用いるとなると、扱いはさらにデリケートになります。
色の表現に物足りなさを感じたときは、自然界にあるものから着想を得ることをおすすめします。
解決の糸口となり、描写をより良いものにできるでしょう。
■ 参考
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