「不調和」を作る
この記事では、調和をもたらすことに重きをおいてご紹介しました。
しかし今回考えるのは、「不調和」についての内容です。
「場面に不調和をもたらす」ことは、かならずしもマイナスの意味合いをもつわけではありません。
あえて「異質なもの」として描くことによって、伝えたい内容を目立たせることができるのです。
たとえば、次のような設定をみていきましょう。
例
● 暗い森の中にいる
● 生暖かい風が吹いている
● 木々の葉がこすれる音が耳に刺さる
● 湿った空気が充満している
● カラスが鳴きながら飛び立つ
⇒ この状況で、男女が愛を交える
この描き方には、不調和が生じていますね。
男女が愛を交えるとしたら、多くの場合で「良い雰囲気の場所」を連想するでしょう。
それなのに舞台となるのは、薄気味悪い場所なのですから。
とはいえ、ここで描かれた「愛」が、場所や状況と一緒に薄気味悪くなるわけではありません。
むしろ周囲の状況とはしっかり差別化され、その存在が浮き上がっていくでしょう。
読み手にとっても、この場面は印象的に映るはずです。
これこそが、不調和をもたらすことで得られる効果といえます。
いいかえれば、ここでは「対比の構造」をもたらしているわけです。
「敵・味方」といった、わかりやすい対立軸を設定しているのではありません。
場面そのものと対比させることで、描きたい内容を目立たせる手法ですね。
したがって、場面に不調和をもたらすことは、立派なテクニックのひとつなのです。
もちろんこの手法は、前後の文脈や前提となる条件によって、ようやく成立するものです。
これを有効に使うには、書き手の緻密な計算によって行わなければなりません。
先に挙げた例で考えれば、暗い森の中で登場人物たちが”唐突に”愛を交えても、まったく効果はないでしょう。
その状況でなければならない必然性や、そこにいたるまでのプロセスがあってこそ、内容が引き立つのです。
かんたんに成立するわけではないものの、上手にハマりさえすれば効果は絶大でしょう。
書き手にとって、挑戦する価値のある手法といえます。
あなたの作品のなかにも、「異質なもの」として描くことでよりその存在が引き立つような要素があるはずです。
場面を構築するときには、調和のみならず、不調和をもたらすことも視野に入れてみましょう。
■ 参考
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