「は」の使い方【係助詞・副助詞】【「が」との違い】
今回は、代表的な助詞である「は」についてご紹介します。
「は」は「が」と同様、主語を指し示す機能をもっていますね。
この記事では、「が」との違いをまじえながら、執筆する上での実践的な使い方にフォーカスします。
「は」について
まずは文法上の区分から考えていきましょう。
「は」が助詞であることに変わりはありませんが、使われる文章によってその区分が変わります。
「は」の品詞
● 文語文 → 係助詞
● 口語文 → 副助詞
係助詞は「係り結び」を形成するなど、古文では重要な役割を果たす助詞ですが、現代語の文章において「係助詞」は存在しないとされています。
つまり現代語で書かれる実際の執筆においては、副助詞(口語文)として扱うことになるはずですね。
係助詞と副助詞が共通して備えられている機能としては、「さまざまな語に付いて意味をそえる」ことです。
この機能は文章表現に対して直接的な影響を及ぼすため、中心に据え置いて考えていきましょう。
多くの事柄から区別する
下記の例文を読み比べてみましょう。
例
① あの女優、歌が上手いな。
② あの女優、歌は上手いな。
①の文から伝わる意味は、「歌が上手い」で完結しています。
しかし②の文では、その裏に隠された意味を匂わせています。
「歌は上手いのだろうけど、ダンスが下手なのかもしれない」
「歌は上手いのだろうけど、容姿が見劣りするのかもしれない」
「歌は上手いのだろうけど、演技が大したことないのかもしれない」
このように「は」には、多くの事柄から”なにかひとつ”を区別する機能があります。
「が」のように特定する力が強く、ほかの要素を排除するわけではありません。
「は」を使えば、区別された物事を取り出し、その背景に含みをもたせながら提示することができるのです。
これについて理解できれば、文から伝わるニュアンスの違いに気がつくはずです。
例
● 私は赤鬼です。
● 私が赤鬼です。
文で示された対象が「区別されたもの」であるか、あるいは「排除しながら強調されたもの」であるか。
どちらも正しく読める文章であっても、両者の違いを感じとることができるでしょう。
「遠くの述語」にまで作用する
「は」が影響を及ぼす範囲は、文章の裏表といった「奥行き」だけではありません。
前後の言葉、つまり「平面」であっても有効に働きます。
わかりやすくいえば、述語との関わりですね。
例文を見ながら考えましょう。
例
① あなたが/虹を見ると/笑顔になる
② あなたは/虹を見ると/笑顔になる
①の文章において、笑顔になるのは「あなた」ではありません。
格助詞「が」の範囲は限定的で、「あなたが/虹を見る(と)」までしか作用しないからです。
しかし②の文章では、文中の「あなた」が笑顔になります。
これは副助詞である「は」が、遠くの述語にまで作用することによって、文の意味が違ってくるのです。
「あなたは/虹を見ると/笑顔になる」
「あなたは→→→→→→笑顔になる」
このように「は」と「が」では、述語との関わり方が大きく変わるのです。
例に挙げた「述語との関わり」が表面化する場合、書き手は注意しなければなりません。
「どちらでも正しい」といえるものではなく、「は」と「が」の使い方が、「文の正誤」に直結する局面といえるからです。
実際の執筆では、述語との関わり方に注意しながら「は」と「が」を使い分けましょう。
■ 参考
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