【多角的な視点】文章の強度を高めるために【テーマとの距離】【意見の複合】
書き手のなかにある「伝えたいこと」は、なるべく説得力をもたせながら表現したいものです。
読み手に理解されなかったり、支持を得られない状況を避けるべく、書き手は創意工夫をこらすわけですね。
このとき書き手が行うのは、いわば文章の強度を高める作業です。
今回は、高い強度をもった文章にするためのプロセスについて考えていきましょう。
多角的な視点をもつ
四角錘(しかくすい)という立体をご存知でしょうか。
底面が四角形をしていて、頂点がとんがったピラミッドのようなかたちのことです。
この立体は、角度によってさまざまな見え方をします。
底面が四角ですから、真上や真下からは四角形に見えます。
名前が「”四角”錘」とはいえ、真横から見たときには三角形になります。
もしもあなたが四角錘について文章を書くとしたら、どの面をメインとして扱うでしょうか。
土台を支える「四角形」にするのか、面の数が多い「三角形」を中心にするのか。
あるいは、すべての面を過不足なく網羅しようとするかもしれません。
このとき書き手は、多角的な視点をもって考えているといえます。
文章の強度を高めるためには、この視点が必要不可欠なのです。
「テーマ」との距離をおく
実践になぞらえて考えていきましょう。
多角的な視点で考えるにあたって、まず書き手はテーマとの距離をおくことが求められます。
たとえば「より良い日本にするために」をテーマに文章を書くとしましょう。
このテーマが前項でいうところの四角錘ですね。
アプローチする方向性はさまざまで、書き手によって偏りが生じてくるでしょう。
政治的な思想におきかえると「右翼」や「左翼」として大別されるこの偏りが、四角錘における「四角形」や「三角形」です。
ひとつの方向から、ひとつの面のみを切り取ることで、書き手の特色や考えを知らしめるのも手でしょう。
ただし「偏り」が大きければ大きいほど、その文章は倒壊しやすくなります。
特定の主義主張をそのまま文章に落とし込むようなやり方で、文章の強度が高まるとは考えづらいのです。
文章の強度を高めるには、テーマとの距離をおくことで「より良い日本にするために」という目的を俯瞰しなければなりません。
それぞれの面にある違いを見つめながら、上手に扱っていくことが大切です。
さまざまな意見を複合的に考える
書き手がもともと、右翼的な思想をもっていたとしましょう。
しかしながら、実際に文章を書くときは、あえて左翼の立場になる瞬間をもうけてみましょう。
この一時的な転向は、「右翼の矛盾点」を探すことになります。
つまり自分の主義主張に対する「批判」や「反論」を想定することにつながるわけです。
もちろん、政治的な思想は「中道」「中道右派」「中道左派」と細分化することもできるため、シンプルな二項対立にとどまるわけではありません。
可能であれば書き手は、輪切りにされたそれぞれの立場についても考えを及ばせるよう努力しましょう。
ひとつの物事に対して複合的に考えることで、テーマに対する理解そのものが深まるからです。
このプロセスを経て、もともとの思想(この場合は右翼的なもの)の説得力が増すことになります。
ここでようやく、文章の強度が高まるわけですね。
実際に文章で扱う物事は、四角錘のようにシンプルでない場合がほとんどです。
執筆にかけられる時間や労力には限りがあるため、本当の意味でそのすべてを網羅することはできないでしょう。
しかし多角的な視点をもって書かれた文章が、実用に耐えられないほどの強度不足を引き起こすとは思えません。
あらゆる角度からひとつのテーマを見据え、深く考えながら文章を紡いでいきましょう。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません