【創作】横書きと縦書きについて【線と面】
今回は文章の「横書き」と「縦書き」についてご紹介します。
とはいえ、良し悪しを探るわけではありません。
人間の身体的な特徴にも触れながら、それぞれの特徴や適している文章について考えていきます。
目は「横」に動きやすい
人間の目は「横」に伸びています。
そのなかで動く眼球もまた、横方向に動きやすくなっています。
ためしに数回、縦に動かしてみましょう。
すると、思っているよりも力が必要になると気づくはずです。
この身体的な特徴は、文章を読むときにも強く影響します。
動かしやすい方向に目線が移動するわけですから、読みやすさでいえば「横書き」が圧倒的に有利です。
身体の構造に逆らわずに読める横書きは、とても合理的な書き方といえます。
実際、日常で目にする多くの文章は横書きではないでしょうか。
横書きは「線」でとらえる
横書きが合理的である理由について、より深く考えてみましょう。
前項にもあったように、横書きは身体的に読みやすい書き方です。
読むときは一行一行、右から左へと線を切るように目で追います。
いわば横書きは、文章を「線」でとらえるわけです。
大きな特徴としては、それぞれの意味にピントを合わせやすいことが挙げられます。
どんなに長い文章であっても、一行一行にフォーカスして、細部から具体的な意味を読みとっていきます。
契約書や定款、請求書や領収書、説明書なども含めて、重要とされる書類がほぼすべて横書きになっているのにも合点がいきます。
ていねいに意味を読みとり、情報を正確に収集できるということを考えても、やはり横書きは合理的に読ませる書き方といえます。
小説は「縦書き」がほとんど
日本語の文章であっても、現代人であればすっかり横書きに慣れているかと思います。
しかし小説の場合、いまだに「縦書き」がスタンダードです。
合理的なのが横書きだとすれば、一般的な小説を読むときの私たちは、おおげさにいえば無理をしているわけです。
本来は横方向に流れやすい目線を、縦方向に何度もぐいぐいと力を加えるのですから、目線がぎこちない動き方をするのは当然です。
もちろん一部には例外もあります。
芥川賞を受賞した素晴らしい文学作品ですね。
とはいえ一般的な小説は、やはり縦方向に文章が連なったものがまだまだ多い。
実際『abさんご』のような作品を見つけるのは難しく、書店に並ぶのは縦書きがほとんどでしょう。
なぜ小説の場合は、縦書きを選ぶのでしょうか。
文章を「面」でとらえる
横書きほどの合理性はなくとも、縦書きが劣っているわけではありません。
縦書きの場合、文章を「面」でとらえることができます。
日本語の文章を読むとき、私たちは多種多様なかたちを目にしています。
ひらがなやカタカナ、漢字はもちろん、ときにはアルファベットも混じりながら、私たちは文章を読みすすめています。
とくに漢字は「表意文字」ですから、字のかたちをみるだけで意味が立ち上がってきます。
これは速読ができる理由のひとつでもあり、漢字が目に入った瞬間に内容をぼんやりと予測することができます。
縦書きの文章を読むときは、前後左右の文章がちらちらと視界に入ることになります。
文章がもつ雰囲気や、内容の大まかな流れなども含めて、読んでいる最中に情報として入ってくるのです。
ある意味では「先読み」をする状態になるわけですが、目線がぎこちなく動くからこそこのような現象が起こります。
いわゆる「行間を読む」という独特な行為も、文章を面でとらえるからこそ発生するといえます。
小説のように「文脈」や「文体」をもっている文章であれば、縦書きこそが合理的に読ませる書き方でもあるわけです。
「文章が進む方向」の意味や理由
冒頭で書いたように、どちらかの良し悪しを探るつもりはありません。
ひとつの情報にピントを合わせたいのなら横書きが適していますが、そうでない場合、縦書きのほうがより多くの情報を同時にキャッチできます。
この”そうでない場合”は限られてしまうわけですが、その代表例がまさに小説ですね。
つまり小説の文章が縦方向に書かれていることにも、相応の理由があるわけです。
自分が書いている文章の種類やその内容については、誰になにをいわれまでもなく熟考するでしょう。
一方で、「文章が進む方向」の意味や理由を考えることもまた、書き手としては大切な心がまえといえます。
いいかえればこれは「文章を目に通している読み手」に意識を向けながら書くことにもなります。
創作する場合はとくに、縦書きでの特徴を活かした書き方ができるよう少しずつ模索していきましょう。
■ 参考
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