登場人物の詳細=取扱説明書
こちらの記事で「人物像はできる限り細かく設定するべき」と説きました。
今回は、その細かく設定した情報を「どのように捉えて、どのように扱うか」というところです。
書き手の裁量に委ねられるのは当然ですが、基本となる考え方についてご紹介します。
いちばんやってはいけないのは、全てをさらけ出そうとすることです。
なぜなら、詳細なプロフィールを公開することが本来の目的ではないからです。
実生活において、「自分はこういう人間だから」と四六時中思いながら暮らしているわけではないですよね。
ましてや、周囲に対して自分のプロフィールを言い回ったりはしないでしょう。
仲の良い友達であっても、その性格はなんとなく把握していても、正確に分析して言語化している人は少ないはずです。
ましてや顔や身体の特徴など、その細部まで鮮明に覚えているわけではありません。
それでも自分は自分であり、友達は友達であり、しっかりとした関係性が築かれています。
登場人物の設定に話を戻すと、設定した内容には使わない情報があって当たり前なのです。
その描写ばかりに文字数を割くということは、要らない情報を提示することと同じといえるでしょう。
「使わないなら最初から設定しなくていいのでは?」と疑問に思うかもしれません。
執筆作業を効率化するという意味ではそのとおりですが、これがなかなか難しいのです。
たとえば、ある場面で登場人物の心情を描写するとしましょう。
そこには「なぜそう思ったのか」⇒「このような人だから」といったように、なにかしらの根拠があるはずですね。
その根拠となるのが、登場人物の設定です。
これがなければ、物語での整合性がとれなかったり、話が極端に右往左往したりと、読み手を置き去りにしてしまうかもしれません。
そのような状況を防ぐためにも、登場人物の詳細は必要なのです。
いわば、書き手のためにある登場人物の取扱説明書ですね。
作中に描かない情報を細かく設定するということは、とても体力の要る作業です。
まずは、それらの情報を捨ててしまうくらいの勇気をもつことが重要です。
ムダな作業に思えるかもしれません。
しかしいざ執筆を始めたとき、見えないところで大いに活躍するでしょう。
■ 参考
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません