比喩を使うということ

2019年11月15日

 

書き手は、ウィットが効いた表現に憧れをもちます。

読み手が「この発想はなかった」とか、「そこに繋がるのか」とか、そうした反応を見せることを期待してしまうわけですね。

これを実現しやすい手法が、比喩表現です。

 

小説における比喩は、書き手の教養やボキャブラリー、あるいはセンスを示す機会でもあります。

したがって書き手は、ある程度の緊張感とともに、気合を入れて比喩を考えるでしょう。

そして、ここぞというときに渾身の比喩を折りこむのです、

これ自体は決して悪いことではありませんが、注意が必要です。

 

そもそも、比喩表現は、わかりやすく伝えるための手段です。

納得感を得られなければ、比喩として表現する意味がないといっても過言ではありません。

 

あえて遠まわしに書かなければ、伝わらないこと。

ストーリーの本題から外れたとしても、伝えたいこと。

それを表現するのですから、書き手は比喩に対して慎重になるべきなのです。

 

 

この前提を理解した上で、重要なポイントがあります。

書き手は、読み手が納得する様子をイメージすることが大切です。

「うんうん」とうなづいたり、「ああ、なるほどね」と目を見開いたり。

 

もちろん、ストーリーに良い影響を及ぼすようにその納得感を機能させるべきなのです。

そうなると、比喩の使いどころはおのずと限定され、洗練されるはずです。

 

「書きたい」という独善的な動機だけで、文章を浪費してはなりません。

比喩表現を使う場合も、当然ながら、読み手のことを考えましょう。

 

 

創作

Posted by 赤鬼