比喩を使うということ
書き手は、ウィットが効いた表現に憧れをもちます。
読み手が「この発想はなかった」とか、「そこに繋がるのか」とか、そうした反応を見せることを期待してしまうわけですね。
これを実現しやすい手法が、比喩表現です。
小説における比喩は、書き手の教養やボキャブラリー、あるいはセンスを示す機会でもあります。
したがって書き手は、ある程度の緊張感とともに、気合を入れて比喩を考えるでしょう。
そして、ここぞというときに渾身の比喩を折りこむのです、
これ自体は決して悪いことではありませんが、注意が必要です。
そもそも、比喩表現は、わかりやすく伝えるための手段です。
納得感を得られなければ、比喩として表現する意味がないといっても過言ではありません。
あえて遠まわしに書かなければ、伝わらないこと。
ストーリーの本題から外れたとしても、伝えたいこと。
それを表現するのですから、書き手は比喩に対して慎重になるべきなのです。
この前提を理解した上で、重要なポイントがあります。
書き手は、読み手が納得する様子をイメージすることが大切です。
「うんうん」とうなづいたり、「ああ、なるほどね」と目を見開いたり。
もちろん、ストーリーに良い影響を及ぼすようにその納得感を機能させるべきなのです。
そうなると、比喩の使いどころはおのずと限定され、洗練されるはずです。
「書きたい」という独善的な動機だけで、文章を浪費してはなりません。
比喩表現を使う場合も、当然ながら、読み手のことを考えましょう。
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