「説明文」と「描写文」の違いを考える

 

今回は「説明文」と「描写文」の違いについてご紹介します。

書き手であっても、これをはっきりと区別できている人はそう多くないでしょう。

よくよく考えてみると、その違いはたしかにあいまいです。

 

 

この記事では、物事の感じ方や捉え方を主軸にして考えてみます。

試しに、とある「ホラー映画」を対象物として、説明と描写をしてみましょう。

 

 

例文

① おもしろいホラー映画を観た。

② 呪いがテーマになっているホラー映画を観た。

 

どちらが説明文で、どちらが描写文かを判別できるでしょうか。

解釈にどことなく含みを感じるのは①の文で、説明的な書き方をしているのは②の文ですね。

しかしながら、ここでの正解は「①が説明文」で「②が描写文」です。

 

 

混乱を防ぐために、もう少し詳しくみていきましょう。

見分けるときのポイントは、冒頭にあったとおり、感じ方や捉え方です。

この感じ方や捉え方を「断定する」か「読み手におもねる」かに大きな違いがあります。

 

 

まずは、①の「おもしろいホラー映画を観た」という説明文から考えます。

ここで扱うホラー映画は、「おもしろい」と断定されています。

何度読み返したとしても、少なくとも作中ではそのホラー映画が「おもしろい」ことには変わらないのです。

感性に頼る部分を揺るがない事実として断定したという意味で、これは非常に説明的な書き方なのです。

 

対する②の「呪いがテーマになっているホラー映画を観た」では、登場人物のホラー映画に対する解釈を断定していません。

物語の流れや読み手の感じ方によっては、「おもしろい」だけでなく「怖い」とか「スリリング」とか、多様な扱いができるようになっています。

その幅や深みを許容できるよう、実態の部分をすくいあげながら描いているわけです。

物事の解釈を読み手におもねるように描いたという意味で、描写的な書き方といえるでしょう。

 

 

つまり、「説明文」と「描写文」は次のように区別できることになります。

 

● 説明文

物事の感じ方や捉え方に含みをもたせず、断定して書く

 

● 描写文

物事の感じ方や捉え方を、読み手におもねるように描く

 

 

これらの判別については、すでに各所で試みられています。

主観と客観による区別や、英訳したときの文型による区別など、さまざまなアプローチをもって解説されているようです。

それらの内容はとても参考になるものの、執筆するときに思い浮かべるには少し難易度が高いように思えます。

 

 

今回の内容は、一言でいえば「読み手から楽しみを奪わない」ということです。

感情を揺さぶられる文章は、本来、書き手が読み手に与えるべきものです。

とくに心情に触れる部分では、読み手が登場人物の気持ちを汲みながら共感することも、小説を読む醍醐味のひとつですね。

その楽しみを奪わないよう、説明文と描写文を区別して使いましょう。

 

■ 参考

 

 

創作

Posted by 赤鬼