【書き出しの型】内面を描く書き出し【心境・感情・意見】
ほとんどの書き手は、書き出しに悩んでいるはずです。
書き出しにはいくつかの「型」があり、それらを体系的に理解することから始めましょう。
なかでも今回は、内面を描く書き出しについて考えます。
この型についての概要や、実際に扱うときのコツについてみていきましょう。
「内面を描く書き出し」とは
語り手となる人物の「心境」「感情」「意見」などから書き出す型です。
この型は内面から描くわけですから、レポートや論文、ビジネス文書には適していません。
小説やエッセイなど、自由に書ける文章の書き出しとして使われます。
物語となれば、多くの場合で「主人公」が中心になるでしょう。
もちろん筆者である書き手自身や、三人称の視点からでもこの型をもって書き出すことはできます。
ただし後述しますが、この型を扱うのはかんたんではありません。
自由に書けるからといって、思ったままを書いていいわけではないのです。
内面を描く書き出しの例
描く内面を「心境」「感情」「意見」に絞り、例文を用意しました。
例
● 心境から書き出す
→ 今日、死ぬつもりでいた。
● 感情から書き出す
→ 胸が躍る様子をはっきりと感じ取れた。
● 意見から書き出す
→ あの出来事は”凄惨”としか表現しようがない。
すべて内面を描くことから書き出しています。
心境や感情や意見などを先頭にもってくると、最初から内面の感覚を読み手に提示することになります。
順当に進めるのであれば、その後に続く文章で提示から「共感」へと変わるようにマネージするはずです。
すると、描いた内面の感覚は、読み手と共有することになるでしょう。
コツは「直接書かない」こと
実のところ、内面を描く書き出しはとても難しい書き方のひとつです。
文章から得られる感情は、本来、読み手のものです。
書き手のものでも、登場人物のものでもありません。
とくに文学作品を書く場合には、「わかりやすい感情」からは距離を保ったほうが良いのです。
意見から描くときはまた別ですが、心境や感情を書き出しに持ち込むのであれば慎重になるべきですね。
例
● 僕は彼女を好きになった。
● 彼女から声をかけられたのは、今日で3度目だった。
どちらも恋の始まりを予感させる文言ですが、前者は「好きになった」と述べることでその事実を規定しています。
文学作品でこれを「好きだ」と断定してしまえば、作中での「揺れ動く心」を描くことができません。
読み手から「共感」や「感情移入」といった楽しみを奪うことにもつながります。
それに対して後者は、とくになにかを決めつけているわけではありませんね。
ただし「今日で3度目」であるとわかっていることから、彼女との接点を数えていたことは間違いありません。
それとなく恋を匂わせる程度に留め、今後の展開につなげているのです。
このように書き手は、感情との距離感を見定める必要があります。
書き出しの段階で安直な印象を与えてしまうと、その後を読むことが辛くなってしまいます。
描こうとする内面の扱いはもちろん、その距離感に注意しながら書き出しましょう。
■ 参考
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