「書く情報」と「書かない情報」の取捨選択【伝わらない不安】【インプット・アウトプット】
文章を書くとき、さまざまな局面で取捨選択をすることになります。
とくに「小説」を書くとなれば、この作業は複合的かつ重層的なものとなります。
今回は、小説を書く場合の取捨選択について考えていきましょう。
「1」を書くために「10」を調べる
まずは小説を書く前の準備について考えましょう。
資料を集めたり、取材をしたりと、書く前にさまざまな準備をします。
このときたくさんの情報を集めるとはいえ、そのすべてを使うわけではありません。
書くために集めた情報は、判別・精査をしながら、整理しなければならないのです。
このとき行われるのは、インプットの取捨選択です。
感覚的には、「1」を書くために「10」を調べるくらいの覚悟が必要でしょう。
最終的に「1」しか書かないのであれば、残りの「9」が無駄に思えるかもしれません。
しかし実際には、このくらいを奥行きをもっていなければ「1」を書くことはできないでしょう。
たくさんの「1」から選ぶ
「1」を書いたら終わり、ではありません。
たくさんの「1」を候補として、そのなかからひとつを選ぶ作業に移ります、
例
バスは大通りを走る。
大通りをバスが走る。
バスは大通りを走っていた。
大通りを見ると、ちょうどバスが横切った。
バスが大通りを過ぎていく様子を見ていた。
いわば、アウトプットの取捨選択です。
実際の執筆では、例文のように候補を並べる必要はありません。
もちろんピンポイントで重要だと思う文章があれば「並べて比較する」のもひとつの手ですが、実際には書き手の頭のなかで構築していくことがほとんどでしょう。
それぞれの精度を判断したり、前後の文脈と照らし合わせたりしながら、ピタリとはまる表現を考えていきます。
「伝わらない不安」が重要
インプットとアウトプット、大きく分けて2つの取捨選択がありました。
これを経て「文章」が出来上がり、書き手のもとから離れていきます。
ただし数々の難所をくぐり抜けたとはいえ、その内容が読み手に伝わるかどうかはわかりません。
そこで書き手は「これじゃあ伝わらないのでは?」と思うはずです。
とくに小説に関しては、あいないな概念の外枠を埋めるように描くため、なおさら不安は大きくなりますね。
実はこのとき書き手が思う「伝わるかどうか」という不安が重要です。
なぜなら書き手は「伝わらない不安」があるからこそ取捨選択し、より良い書き方を模索するのですから。
不安は取捨選択の原動力となるため、「伝わらない不安」があるのは健全なことです。
ここでの「不安」と「取捨選択」の関係性を、サイクル化するとさらに良い文章を書けるようになります。
不安を取捨選択の作業にフィードバックすることで、「集めた情報」や「選んだ表現」の精度が増していきます。
伝わらないことを気負いするのではなく、その不安を文章の質に昇華していきましょう。
■ 参考
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