危機的な状況を描く ~ 複数の危機を重ねる ~
危機的な状況がどのように終結するかは、ほとんど決まっているも同然です。
だからこそ、物語において危機を描く場合には中身を重視しなければなりません。
そのことについては、こちらの記事でご紹介しましたね。
今回は、この内容をさらに発展させます。
スリリングな展開にするにあって効果的なのは、複数の危機を重ねることです。
引き続き、例を見ながら考えていきましょう。
登場人物は「厳しい上司」として知られている40代の男性です。
● 危機
⇒ 今にも漏れそうなほど、激しい便意を感じていた
● 最悪の状況
⇒ 職場で漏らすと、たちまち笑いものになる
● タイムリミット
⇒ トイレにたどり着くまであと少しだ
無事にトイレにたどり着くことができるか、はたまた間に合わず大惨事を招くか。
いずれかの結末が予想できますね。
その予想を裏切るために、さらなる危機を物語に設定します。
考え方としては、「回避したと思いきや……」でつながる危機を設定すると構築しやすいでしょう。
もちろん、実際の執筆でこの文言どおりに書く必要はありません。
例を挙げてみます。
1. 今にも漏れそうなほど、激しい便意を感じていた(危機)
2. 職場で漏らすと、たちまち笑いものになる(最悪の状況)
3. トイレにたどり着くまであと少しだ(タイムリミット)
トイレに間に合ったと思いきや、個室が全部埋まっていた
4. やむを得ず、女子トイレに駆け込む(危機)
5. 女子社員にバレたら、漏らすよりも悲惨だ(最悪の状況)
6. なんとか間に合ったが、誰かがくる前に出なければならない(タイムリミット)
用を済ませてトイレを出ようと思いきや、女子社員が入ってきた
7. ここにいることが知られてはいけない(危機)
8. コンプライアンス上、クビになってもおかしくない(最悪の状況)
9. 重要な会議の前までに、ここを出なければならない(タイムリミット)
さらなる危機として、ここでは2つの要素を盛りこみました。
「トイレに間に合ったと思いきや、個室が全部埋まっていた」
「用を済ませてトイレを出ようと思いきや、女子社員が入ってきた」
最初は単なる生理現象だったものが、ハラスメントや性犯罪に発展しかねない状況になり、いよいよ社会的な死を迎えようとしています。
複数の危機を重ねるポイントは、設定する危機の内容をどんどん悪化させていくことです。
一度は危機を回避できたと思わせ、ひと回り大きな危機でさらにたたみかけていくイメージですね。
このように危機を重層的に設定すれば、読み手の心を大きく揺さぶることができるのです。
当てずっぽうに危機を設定してしまうと、緊迫感のない危機になったり、物語の世界での整合性がとれなくなったりもします。
「回避したと思いきや……」をもって異なる危機同士を接着しながら、その規模を徐々に広げていけば、スリリングな場面をスムーズに展開できます。
スリリングな展開を描くときには、ぜひ参考にしましょう。
■ 参考
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