会話文の「落としどころ」を見つける
今回は、会話文の文体について考えましょう。
こちらの記事で、会話文には「超えられない壁」があることをご紹介しました。
ようするに、小説の会話はどうしても不自然になってしまうものなので、書き手はそのことを自覚しなければならない、ということです。
これを肝に銘じたとして、書き手は具体的にどのように取り組めばいいのでしょうか。
実際の執筆において問題になるのは、文体です。
なるべく自然な会話文を目指して、このように書いたとしましょう。
現実での発言を、できるかぎり忠実に再現した例です。
「口語をそのまま文章に落とし込むように書いた」ことがわかる文体ですね。
現実に近寄る試みは良いですが、小説らしさが薄まった印象を受けます。
もちろん作品全体をマネージメントすれば、この文体でも成立するでしょう。
地の文をフランクな文体で書くなど、文脈として読み手に違和感を与えないような工夫が必要ですね。
次の例です。
こちらの例は、小説らしさを意識しすぎたように感じます。
この文体であれば、地の文との整合性はとりやすいのでしょう。
しかし、会話文としてはやや堅い印象を受けます。
このような会話文には「役者のセリフっぽさ」があります。
「書き言葉で表現する話し言葉」を、どのように作品の雰囲気で馴染ませるかがポイントですね。
例文1と同様、作品全体を通してマネージメントしなければなりません。
最後の例です。
会話文の落としどころとしては、このような表現が使いやすいのではないでしょうか。
「どういうこと?」という聞き返しは、老若男女問わず使われるものですし、文末をいじればキャラクターの設定にあわせた表現もできますね。
(「どういうことだよ!」「どういうつもり?」など)
例文1・例文2の内容を踏襲しながら、作中の話者が伝えようとしていることを自然に表現できた文体です。
文章表現ですから、正解・不正解を明らかにするつもりはありません。
重要なのは、おさまりの良い表現を見つけることです。
どのような文章でも行われる作業ではありますが、会話文ではとくに力を注ぐ必要があります。
書き言葉でも話し言葉でも納得できるような、自然な表現に近づくためには必須なのです。
良い作品を書くために、文体の整合性をみながら、表現の落としどころを見つける。
そしてこれを、納得できるまで繰り返す。
常に試行錯誤しながら、違和感を与えない会話文を目指しましょう。
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