他者同士の関係性を考える
今回は、主人公以外の登場人物の関係について考えましょう。
主人公以外の登場人物、つまり他者には「他者同士の関係性」があります。
考える必要のないくらい、当たり前のことですね。
しかしどういうわけか、小説を書くとなれば、書き手はこの当たり前のことを忘れがちです。
書き手が他者同士の関係性を無視していると、すべての関係を類型化することになります。
かんたんにいえば、その作品が薄っぺらなものになってしまうのです。
わかりやすい例として、「主人公と両親」の関係性をみていきましょう。
「両親」と括られる二人には、それぞれの人生があります。
元々は、「恋人⇒夫婦」など、主人公抜きで構築した関係がありました。
だからこそ現在の関係性があるわけですね。
さらにいえば、二人の人生は今後も続きます。
二人が人間として人生を歩んでいくことが、「主人公と両親」という関係性を支えていくのです。
書き手がこの事実を無視していると、主人公を取り巻く関係性は「単なる記号」となってしまいます。
「父親」と「母親」、あるいは「両親」は、ごく一般的なものとしてのみ作中に存在することになるでしょう。
いいかえれば、その関係性にリアリティをもたらすことができないのです。
父親と母親で、それぞれのやり方や考え方は違っているはずです。
おおまかには「愛情」と表現される主人公に対する思いも、細部ではそのかたちが異なるのも当然です。
夫婦間で合意がとれるかどうかによって、主人公に対する接し方も変わってくるでしょう。
だからこそ書き手にとって、他者同士の関係性を考えることは重要なのです。
リアリティをもたらすためには、「主人公以外の登場人物がもつ現実」を見据えて、それぞれの人生を尊重しなければならないのです。
もちろん、重きをおくべきは「考えること」ですから、その様子を詳細に描くかどうかは別です。
作品の都合から、関係性を描くために文字数をかけられないこともあるでしょう。
そのときは「裏設定」とまではいわないにしても、それぞれの背景を練っておくことは最低限必要です。
登場人物の設定から形成された他者の在り方は、文章の上に滲み出るはずです。
すると、描いた関係性にリアリティをもたらすことができるでしょう。
人間関係とは、私たちが思っているよりもずいぶんと複雑なのです。
さまざまな要因から紡がれる関係性を無視するとなれば、それを作品に「描く意味」を考え直さなければなりません。
他者同士の関係性を考えながら、厚みのある物語を描いていきましょう。
■ 参考
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません