「回想」について
今回は、回想について考えていきましょう。
回想を利用すれば、物語のなかにさまざまな場面を取り入れることができます。
ある意味では「隠し技」のようなもので、書き手としてはとても便利に活用できる手法です。
しかし結論からいえば、回想を使うことはおすすめできません。
もっとも大きな理由は、書き手の意識が「主人公の心情」のみにフォーカスされてしまうからです。
具体的に考えていきましょう。
回想は、主人公の正当性を確保するために用いられる傾向にあります。
書き手として、回想を使う意図を考えてみてください。
その裏側に「こんな背景があったから今ではこうなったんだ」というようなメッセージが込めているのではないでしょうか。
「手軽に読み手を納得させることができる」と考えれば、有効な手法に思えます。
しかし、主人公の正当性を示したいのであれば、回想によって時系列を前後させないほうが良いでしょう。
回想で描かれる内容や、そこから導かれる主人公の現状は、「既存の事実」として扱うことになります。
読み手からすれば「そういうことなんだ」と理解せざるを得ないのです。
本当の意味で読み手を納得させたいのであれば、時系列に並べながら、場面を経過順に組み立てるべきです。
時系列に並べて書くとなれば、順を追って構築しなければなりません。
書き手からそれば、そこに「一定の論理性」が求められるわけです。
くり返しになりますが、回想を使う書き手は、主人公の心情のみにフォーカスされます。
これは、書き手が「主人公の側に立っている」といいかえることもできますね。
時系列に並べていくなかで「一定の論理性」を求められれば、書き手は冷静になります。
主人公の心情を、客観的かつ相対的に考えながら執筆することができるのです。
かんたんにいえば、物語の流れから読み手に「なるほどこうなるのか」と納得させることができます。
「こんな背景があったから今ではこうなったんだ」と省略するよりも、読み手は主人公に同調しやすくなるでしょう。
結果として、描いた内容の説得力は増していきます。
もちろん、回想は使われている作品は数多くあるため、この手法が禁忌というわけではありません。
ただし、それは前提として書き手の緻密な計算があってのことで、決して安易に使えるものではないのです。
回想に頼ることを優先するのではなく、まずはひとつずつ論理を積み重ねてみましょう。
■ 参考
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