【創作】回想を作るときのポイント【入口を構造から作る】

 

回想の扱いは非常にデリケートで、書き手は多大なエネルギーを消費します。

今回は回想を取り入れるときのポイントをご紹介します。

とくに着目するのは回想の内容というよりも、物語の構造です。

順を追って見ていきましょう。

 

 

回想は前後運動

まずは前提の部分をはっきりさせましょう。

回想でさまざまな場面を取り入れると、物語が躍動しているように思えます。

しかし実際、その動き方は「現在⇔過去」の前後運動でしかありません。

 

回想シーンの効果によって、登場人物は「深み」をもつことができるでしょう。

ただし、かならずしも物語に「盛り上がり」や「奥行き」が生まれるわけではないのです。

回想を使うとしたら、まずはこの前提を自覚しておかなければなりません。

それでもなお、その「前後運動」に読み手を付き合わせるとなれば相応の工夫が必要です。

 

 

回想は「入口」がポイント

具体的に考えていきましょう。

書き手がとくに工夫すべきポイントは、回想の入口です。

きっかけとなる入り口の作り方によって、回想シーンの仕上がりが左右されます。

 

かんたんに使えるのは、次のようなパターンです。

 

● “ほかの登場人物との会話”をきっかけにする

→ 彼女は、僕の肩にある大きな傷を見た。「なにがあったの?」と不安げに問う。

● “主人公の過去を想起させる物事”をきっかけにする

→ 耳に入ってきたのは懐かしいメロディーだった。あの頃、よく聞いていた曲だ。

 

話を「過去の出来事」に転換させるわけですから、書き手はそこに違和感が生じないよう努力すべきです。

自然な流れを実現するには、「きっかけとなる要素」が必要です。

それが例に挙げた「登場人物との会話」や「昔を思い出す物事」ですね。

このような入口を構造に取り入れることで、自然に回想に入ることができるでしょう。

 

 

回想せざるを得ない状況を作る

読み手が退屈するのは、長ったらしい説明文です。

とくに回想シーンを描くときは「実は昔こんなことがあって、それが残っていて、だから今こうしていて……」のように説明しがちです。

もちろん「理由」や「背景」の説明が必要になる場合はありますが、だからといって物語がおもしろくなるとは考えにくいのです。

書き手は退屈な時間をもたらすことついて、どのように読み手を納得させるかを考えなければなりません。

 

前項の例で考えてみましょう。

 

彼女は、僕の肩にある大きな傷を見た。「なにがあったの?』と不安げに問う。

 

たとえばこれが「ベッド上でのやりとり」だったとします。

身体に大きな傷があれば、ベッドシーンなどでは目につくはずです。

親しい相手に目についてしまうような傷があれば、そのパートナーは聞かずにはいられませんね。

 

このように、回想せざるを得ない状況を作るのです。

構造からもたらされたものは、強い説得力をもちます。

たとえ回想で描くものが「後付けの理由」や「付け足しの背景」であったとしても、それは物語として成立させるために「必要なもの」となるからです。

そのため回想の入口さえしっかりしていれば、読み手はその内容を受け入れてくれるのです。

 

これは前項にあった「回想の入口」を作ることで実現できます。

「回想の入口」を考えることは、「回想をもたらす構造」を考えることでもあります。

しっかりとした入口さえ作ってしまえば、読み手は納得してくれるはずです。

回想シーンを取り入れるとき、書き手は物語の構造から生み出すよう工夫しましょう。

 

■ 参考

創作

Posted by 赤鬼