【明記しない】伝えたいことを「浮き彫り」にする【読み手に預ける】

 

創作では、明記を避ける傾向にあります。

要するに「伝えたいことをはっきり書いてはいけない」のです。

創作の書き方におけるセオリーのようなもので、どこかで見聞きしたことのある書き手も多いでしょう。

今回はこのセオリーについて、実践の領域に踏み込んでご紹介します。

 

 

はっきり書くと伝わらない

たとえば登場人物が孤独でいる様子を伝えるとします。

この場合、次のようには書きません。

 

寂しい。

 

なぜなら、「説得力」という意味で不十分だからです。

 

書き手がはっきりと言語化すれば、内容としては過不足なく伝わります。

しかしその内容は「類型化された情報」として読み手に届くことになります。

すると、書き手が本来感じてほしかった孤独感が伝わらなくなるのです。

 

創作で「寂しい様子」を伝えるのであれば、誰がどう見ても寂しい状況を作る必要があります。

単に「寂しい」と言語化してしまうのは、書き手として「楽をしている」「逃げている」「責任を放棄する」のと同様です。

 

 

「書く」のではなく「浮き彫り」にする

感覚で理解したほうが実践しやすいでしょう。

 

星(☆)を描画するとします。

 

 

きれいに描画された星(☆)ですね。

これは前項でいうところの、「寂しい」と明記することと同様です。

 

創作の書き方として、このようにきれいな図形を提示する必要はありません。

周囲を塗りつぶすことで、伝えたいことを浮き彫りにするのです。

 

 

いびつであっても、星のかたちをしていることはわかります。

書き手は伝えたい内容に対して、このようにアプローチしていかなければなりません。

 

 

「きれいな図形」を描くのは書き手ではない

書き手は明言を避けながら、伝えたい内容を形成していきます。

 

● 気付けば独りだった。

● 頼れる人は誰もいなくなった。

● 誰かがそばにいてほしいと思った。

 

例としていくつか挙げたものの、これでもまだ直接的な表現に思えます。

高い純度で伝えるには、場面の描写や物語の展開、細部の文言などを工夫して、じっくりと周囲を塗りつぶしていかなければなりません。

 

「いびつに描画すること」を前提としているわけですから、この部分に不信感を抱いている人もいるでしょう。

たしかに書き手自身で「きれいな図形」を描けるのであれば、それに越したことはないように思えます。

しかし作品を書いているうちは、あなたがどれほど努力してもきれいな図形になり得ません。

本当にきれいな図形は、読み手のなかに描かれるからです。

 

前項にあったいびつな図形は、読み手が補完してくれるのです。

読み手がイメージしたものは、書き手が与えた図形よりも純度が高く、きれいに描画されています。

書き手は読み手を導きつつ、伝えたいことを預ける勇気が必要です。

 

純度を高く保って伝える努力は重要ですが、書き手が欲張る必要はありません。

安易に言語化することなく、内容の周囲をていねいに浮き彫りにしていきましょう。

 

■ 参考

創作

Posted by 赤鬼