【精神的な特徴】変わるものと変わらないもの【求められる変化】【読み手の意識】
物語で扱う要素として「変わるもの」と「変わらないもの」があります。
今回は、精神的な特徴の変化について考えてみましょう。
精神的な特徴は、登場人物の「内側」にあるものです。
書き手がこれをどのように扱うかによって作品の在り方が大きく左右されます。
ていねいに見ていきましょう。
精神的な特徴
書き手は、登場人物のパーソナリティに配慮しなければなりません。
物語が進行するに連れて、その”個性”を浮き彫りにしていきます。
たとえば主人公に「自己中心的な性格」を設定したとします。
書き手は「自分の利にならないことは徹底的に嫌う」ように演出したり、「他人よりも自分自身のことを大事にする場面」を設定したりと、さまざまな工夫を施すでしょう。
パーソナリティの設定が破綻すると、読み手が感情移入できません。
主人公に対しする共感も反発も得られないのです。
そのような事態にならないよう、一応は「変わらないもの」として書き進めるわけですね。
精神的な特徴は変化する
しかし、主人公の精神面が最初から最後まで変化しない物語はありません。
探せばどこかに存在はするのでしょうけれど、間違いなく少数派といえます。
前項にならって「自己中心的な性格」を描くとしましょう。
序盤では、その性格の形成に注力してもかまいません。
書き手は並行して「主人公の精神面がどのように変化するか」を考えましょう。
物語での出来事によって主人公の感情が揺さぶられ、その体験から人間として成長しなければ、平板な物語となってしまうからです。
そして終盤では「利他的な思考になった」「誰かのためを思うようになった」「豊かな協調性をもった」のように着地するわけです。
この現象は、「身体的な特徴」でみた性質とは違っています。
主人公の精神的な特徴は、変化を許されているわけではありません。
物語の構造上、変化を求められているのです。
したがって書き手は、精神的な特徴を「変わるもの」として扱うべきです。
「物語の最初と最後で主人公はどのように変化したか」を考えながら書きましょう。
読み手の意識が変わる
なぜ主人公の精神的な特徴に変化が必要なのか。
理由は、主人公の変化が「読み手の意識の変化」を標榜しているからです。
主人公の精神は、さまざまな経験をすることで徐々に変化していきます。
だからこそ読み手は、物語の世界に引き込まれ、主人公に感情移入するのです。
誤解を恐れずにいえば、主人公が得た学びや教訓が「読み手のもの」になるわけですね。
この変化は物語全体からにじみ出てくるもので、読み手の意識をゆっくりと変化させます。
物語によっては、読み手の人生が大きく変わることもあるでしょう。
「自分に影響を与えた作品」を思い返してみると、心覚えがあるかもしれませんね。
強く響くような作品にするべく、物語を読み終えた後で「読み手の意識がどのように変わるのか」を考えましょう。
■ 参考
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