プロット優先での「人格破綻」に注意する
今回は、「物語のプロット」と「登場人物の人格」の関係について考えましょう。
物語の骨組みとなるプロット(筋書き)と、物語を動かす登場人物の人格は、常に相関しています。
いざ執筆するときは、双方の関係をみながらバランスをとらなければなりません。
書き手がとくに注意すべきは、「プロットを優先して人格を破綻させるケース」です。
「人格が破綻する」といっても、登場人物が発狂する場面が出来上がることではありません。
書き手がプロットを優先するあまり、登場人物がもつ本来の人格が歪められてしまう状況を指しています。
たとえば、恋愛小説を書くとします。
例
※ 登場人物の人格
主人公 ⇒ 気が弱い
恋人 ⇒ 気が強い
1. 共通の友人を介して出会い、お互いに惹かれあう
2. 性格のバランスがとれていた二人は、付き合うことになる
3. 恋人が共通の友人を馬鹿にして、そのことに主人公は激昂する
4. 主人公が恋人に殴りかかり、二人は別れることになる
気が弱いはずの主人公が、友人を馬鹿にされたくらいで取り乱すのは不自然ですね。
ものすごく嫌な気持ちにはなるでしょうけれど、そもそも「相手に強く物申すことすらままならない」と考えるのが自然です。
殴るほどの大喧嘩に発展するような “きっかけ” と考えれば、適切とはいえません。
理屈をもって考えると至極当然のことであり、単純な問題であるように思えますね。
しかし、多くの書き手がこの罠にかかってしまうのです。
原因は、書き手がプロットを優先しているところにあります。
具体的には、書き手の意識が「物語を主体とするご都合主義」に転じていて、登場人物の人格を軽視しているのです。
もちろんどのような人であっても、その性格には「多様性」や「多面性」を含まれています。
状況によって、思いもよらぬ反応を見せることや、意外な一面を見せることもあるはずです。
しかし、書き手が登場人物を描くとき、この前提に甘えることは控えたほうが良いでしょう。
なぜなら、物語が進行するごとに、一貫性のない人格が形成されていくことになるからです。
いつも強気だったはずの登場人物が、ある場面では自信をなくしたり。
厚かましくふるまっていた登場人物が、突然、謙虚な姿勢を見せたり。
もしも人格が変容するのであれば相応の “きっかけ” が必要で、プロットを考えるときはこのことを汲まなければなりません。
架空の人物とはいえ、書き手はその人格を尊重すべきです。
物語によって登場人物が歪められないよう、バランスをみて執筆しましょう。
■ 参考
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