「設定の後付け」をしない
常に書き手が物語を操作できるとは限りません。
物語が進むにつれ、思うように展開できなくなったり、整合性がとれなくなったりと、立ち往生する場合があります。
そのとき、物語のカギとなる設定を後付けすることは禁物です。
わかりやすいのは、推理小説です。
「犯人はこの中にいる!」としたものの、犯行時のトリックが思いつかなかったとしましょう。
そこで最終的に「実は外部の人間の犯行だった」としたら、物語を締めることはできても、推理小説としては成立しませんね。
書き手の都合、あるいは展開上の都合によって、物語の構造をねじ曲げているのですから当然です。
このような出来事は、推理小説以外でも起こります。
たとえば、次のような設定を用いて、恋愛小説を書くとしましょう。
● 主人公は、ちょっと変わった女性と付き合うことになる
● さまざまな困難を乗り越え、絆を深め合う
● 大恋愛をした2人が唐突な「別れ」を迎え、物語は終わる
しかし、書き手が「別れ」の理由を思いつかなかったとします。
展開上、病気を要素として用いるのは安易に感じるし、浮気をするほどの動機も考えられない。
そこで、このような設定を付け足しました。
⇒ 実はヒロインが異星人で、星に帰ることになった
このように「設定の後付け」すると、物語を構成する上でさまざまな問題が発生します。
「ヒロイン=異星人」であることは、物語を大きく動かす要素であるはずですね。
ヒロインの考え方、言動や行動に大きな影響が出るでしょうし、物語の展開や場面の描き方も変わってくるでしょう。
物語全体に反響するような重要度の高い設定は、なるべく早めに提示しなければなりません。
そうでなければ、「ヒロイン=異星人」であるという重要な設定が、「別れ」にいたるまでの展開や描写まったく影響していないことになるからです。
この状況は、「どんでん返し」や「意外な展開」とはまるで異なっています。
一般的な恋愛小説のなかで「別れの必然性」をもたらすために後付けしたのですから、そこには伏線もなければ、書き手の緻密な計算もありません。
つまり、読み手からすればとても理不尽な物語になるのです。
物語の進行に合わせて、書き手が然るべき要素を取捨選択することは十分に考えられます。
ただし、物語のカギとなる設定を後付けするなら、作品を最初から書き直すことを辞さない勇気が必要です。
容易に設定を後付けすると、物語そのものが破綻することにつながりかねません。
思いついた設定が後付けにならないよう、十分に注意しながら構成しましょう。
■ 参考
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