「展開」と「付け足した設定」の違い
物語のボリュームが足りないと感じたとき、書き手が設定を付け足す場合があります。
付け足した設定によって、文字数やページ数を増やして、物語を完成させるという作業ですね。
とくにめずらしいことではありませんが、この作業を行う書き手は注意しなければなりません。
物語の「展開」と、書き手が「付け足した設定」は根本的に違っています。
まずは展開から考えてみましょう。
展開は、物語が動く必然性をもっています。
たとえば次の物語は、必然性をもった展開によって進行しているといえます。
● この国は、魔王によって支配されていた。
● 勇者が、魔王を退治するために旅をする。
● 魔王の刺客が現われ、行く手を阻む。
● くじけそうになるも、地道に鍛錬を重ねる
● さらに強くなった勇者は、ついに魔王を倒す。
必然性の多くは、葛藤や障害、登場人物の願望などによってもたらされます。
これらは、物語を駆動させたり、加速させたりする要因となります。
だからこそ、必然性をもって物語を展開することができるわけです。
それに対して、「付け足した設定」は構成上の必然性をもっていません。
これもまた、例をみながら考えましょう。
● この国は、魔王によって支配されている。
● 勇者が、魔王を退治するために旅をする。
● 魔王の刺客が現われ、行く手を阻む。
● 仲間を募る
● くじけそうになるも、地道に鍛錬を重ねる
● 強くなった勇者は、ついに魔王を倒すことができた。
「仲間を募る」は、非常にありふれている設定ではあるものの、決して悪い設定ではありません。
しかしこの段階で、「物語と密接な関係をもっていない」ことを書き手は自覚する必要があります。
かんたんにいえば、物語に馴染んでいないのです。
「付け足した設定」と「展開」の本質的な違いとは、ここにあります。
物語に馴染ませるためには、さらなる設定を考えなければなりません。
● 師となる人に出会い、そこで修行を重ねる。
● 修行場にいた兄弟子が、主人公の旅についてくることになる。
いわば、物語の世界を構築する上での「配慮」ですね。
安易に設定を付け足そうとすると、物語に対する配慮を欠いてしまいがちです。
物語の世界での整合性をとることが難しくなり、そこに歪みのようなものが生じるでしょう。
それが読み手に伝わらないよう、物語における「展開」と「付け足した設定」の違いを意識することが重要になるのです。
設定を付け足す場合は、作品全体をみながらマネージすることを心がけましょう。
■ 参考
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