受動態と能動態を使い分ける【読み手に与える印象】【意図的に操作する】
今回は「受動態」と「能動態」の使い分けについて考えていきましょう。
ここでは「文法的な正しさ」というよりも、「読み手に与える印象」を操作するための実践的な内容をご紹介します。
巧く使いこなすことで、その印象を意図的に操作することもできます。
順を追って見ていきましょう。
ポイントは視点の違い
まずは例文を見てみましょう。
例
1. 記念日を忘れていたので、彼氏は彼女に怒られた。(受動態)
2. 記念日を忘れていたので、彼女は彼氏を怒った。(能動態)
ここで注目すべきは、視点の違いです。
受動態で書かれた1の文は彼氏の視点、能動態で書かれた2の文は彼女の視点ですね。
能動態と受動態を使うときは、視点を意識することがポイントになります。
例文になぞらえて考えれば、前後の文章を彼氏視点で書いていたのに「彼氏を怒った(能動態)」で書くのは不自然です。
その逆もまた然りで、文脈は彼女視点なのに「彼女に怒られた(受動態)」で書いてしまえば、日本語として違和感を覚える文章になるわけです。
視点の違いが「伝わり方」に影響する
文の視点が変われば、主体となる人物が変わります。
同じ状況を示しているとしても、登場人物である「彼氏」「彼女」の印象には差が出るでしょう。
例
1. 記念日を忘れていたので、彼氏は彼女に怒られた。
彼氏の印象 ⇒ 情けない/頼りない/どこか抜けている
2. 記念日を忘れていたので、彼女は彼氏を怒った。
彼女の印象 ⇒ 気が強い/想いが強い/抜け目がない
印象の違いは「伝わり方」に大きく影響します。
たとえば文章で「彼氏と彼女のどちらに非があるか」を判断するとしましょう。
視点の違いによって伝わり方が変われば、読み手の意見も変わってくるはずです。
どちらの立場をとるかにもよりますが、書き手がそのカギを握っていることは間違いありません。
読み手の印象を操作できる
「ニュアンスの違い」と捉えれば、読み手に与える印象の差は大きくないかもしれません。
しかし書き手は、たとえ微細であろうとも、その差を逃してはならないのです。
例
1. 記念日を忘れていたので、彼氏は彼女に怒られた。
彼氏に対する怒り、同情、疑問などを誘う
2. 記念日を忘れていたので、彼女は彼氏を怒った。
彼女に対する共感、同調、正当化などを促す
読み手に与える印象は、書き方ひとつで操作できるのです。
その書き方とは、ここまでご紹介してきたとおり、能動態と受動態を使い分けることですね。
どちらかを非難したり、どちらかを擁護したり、フラットに伝えたりするのも、細部の積み重ねによって決まります。
書き手が「能動態」と「受動態」を意図的に使い分けることで、文章の方向性は定まります。
視点に意識を及ばせながら、巧く使い分けていきましょう。
■参考
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