【創作】読み手を「ハッ!」とさせる表現【組み合わせを考える】
今回は言葉の使い方や選び方について、あらためてご紹介します。
書き手が得られる幸せのひとつは、独特の表現で読み手を「ハッ!」とさせることです。
これを実現するためには、「表現に対する考え方」を見直す必要があります。
例をみながら考えていきましょう。
難しい言葉はプラスにならない
書き手の頭が”小説モード”になると、どこからか言葉が浮かんできます。
そのなかには、普段決して使わないような「難しい言葉」がたくさん含まれています。
どういうわけか書き手は、そんな馴染みのない言葉たちをそのまま文章に落とし込みたくなります。
例
小夜は白妙の裾を敷いている。
「小夜」「白妙の裾」「敷いている」と書けば、それとなく小説らしい雰囲気は演出できます。
ただし表現としてわかりやすいわけではなく、胸にストンと落ちるような説得力もありません。
「難しい言葉」を使ったからといって、作品にとってそれがプラスになるわけではないのです。
書き手はこのことを勘違いしないようにしましょう。
できれば「かんたんな言葉」で
前項の例文の内容を噛み砕いてみましょう。
かんたんな言葉を使うと、次のように表現できます。
例
今夜は雪が降っている。
伝えたかったのは、たったこれだけの内容です。
実際の執筆ではもう少し工夫するにしても、無理をして難しい言葉を使う必要はありません。
どちらかといえば、かんたんな言葉を選んだほうがいいのです。
難しい言葉をそのまま出力することのないようにしましょう。
重要なのは「組み合わせ」
「難しい言葉」や「かんたんな言葉」の振り幅が理解して、ようやく次のステップに進めます。
本来書き手が考えるべきは「言葉の組み合わせ」であり、ここがもっとも重要な部分です。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
(川端康成『雪国』新潮文庫)
ここで着目すべきは、『夜の底が白くなった』です。
「小夜は白妙の裾を敷いている」では無駄が多く、「今夜は雪が降っている」では工夫が足りない。
引用した『夜の底が白くなった』は、一切の無駄を省いた上で、情緒をもって伝わる表現を成立させているといえます。
わかりやすい言葉を斬新に組み合わせることで、この表現に秀逸さがもたらされ、独特の雰囲気を演出できているのです。
このように作られた表現こそ、読み手の共感を引き出しながらも「ハッ!」とさせることができます。
書き手は「既存の言葉」や「一般的な使い方」に執着してはいけません。
新奇性のある組み合わせを見つけ出し、読み手をうならせる表現を目指しましょう。
■ 参考
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