【創作】比喩の成分を考える【表現の振り幅】
比喩を考えるときには、表現として物足りなかったり、いきすぎていたりすることがあります。
この記事では、表現の振り幅のことを「成分」という概念で扱います。
成分に過不足があると、比喩表現は成立しなくなります。
例をもって、それぞれを見ていきましょう。
比喩の成分が不足している場合
多くの書き手は「手垢のついた表現」を避けます。
理由は、ありきたりな言葉には比喩の成分がほとんど含まれていないからです。
例
そこは弱肉強食の世界だった。
たしかに「弱肉強食である様子」を伝えたいのであれば、もっともわかりやすい書き方でしょう。
しかし比喩表現としてみたとき、この表現は評価されません。
「弱肉強食」という言葉には手垢がこびりついているため、悪い言い方をすれば「逃げの発想」でしかないのです。
読み手をうならせる比喩表現を使うために、まずは消去法で考えることから始めなければなりません。
書き手は「手垢のついた表現」を省いた上で、伝えたい内容と合致する言葉を探しましょう。
比喩の成分が超過している場合
書き手が比喩の「センス」を勘違いすると、ついつい奇をてらった表現を使いがちです。
「弱肉強食である様子」を表現するとき、次のように書いたとしましょう。
例
そこはフロントフォークのインナーチューブがどこまでいってもアウターの内径に縛られる世界だった。
よほどバイクに詳しい読み手でなければ、ここに書いている意味がわからないはずです。
読み手に伝わらないのであれば、比喩表現は失敗といっていいでしょう。
表現がユニークすぎたり、マニアックすぎたりすると、かえってわかりづらくなります。
難しい言葉や専門用語に頼るしかないのであれば、比喩で表現する意味がないのです。
過不足のない言葉で表現する
表現が安直すぎる場合や、奇をてらいすぎる場合は「比喩表現を使うこと」を目的としている可能性があります。
比喩表現は「読み手にわからせること」が最大の目的です。
書き手は一度冷静になり、この前提を見直さなければなりません。
その上で、過不足のない言葉で表現することが重要です。
比喩に必要な「センス」とは、いいかえれば「比喩の成分のバランスをとれるかどうか」です。
つまり物事をわかりやすく伝えるために、絶妙な振り幅を設定するのが書き手の役割です。
これに成功すれば、読み手は「共感」や「納得」をもって内容をイメージすることができるでしょう。
自分の比喩表現を見つめ直すときは、言葉の在り方に縛られることなく、比喩成分の過不足がないかを確認してみましょう。
■ 参考
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